平昌五輪まで11カ月 江原道ってどんな場所? 競技施設は97%が完成も…

[ 2017年3月9日 13:13 ]

平昌五輪のマスコット「スホラン」(左から)とパラリンピックのマスコット「バンダビ」     
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 2018平昌(ピョンチャン)冬季五輪はきょう9日で開幕まで11カ月。韓国北東部の江原道(カンウォンド)にある平昌郡(人口約4万人)、江陵(カンヌン)市(同約22万人)を中心に開催される。江原道とはどんな場所なのか。国内の機運の盛り上がり、競技施設などハード面の準備は順調なのか。韓国観光公社主催の江原道がカンウォンド「ツアーに参加し、テスト大会を兼ねて行われたフィギュアスケート四大陸選手権などを視察し、その雰囲気を肌で感じてきた。(東山 貴実)

 福岡空港から1時間余りのフライト。韓国の玄関口、仁川がインチョン「国際空港に降り立つと、到着ロビーでは平昌五輪のマスコットである白虎の「スホラン」と、パラリンピックのマスコットであるツキノワグマの「バンダビ」が出迎えてくれた。

 平昌、江陵のある韓国北東部は国内で最も開発の遅れた地域の一つだったが、五輪を契機に交通網の整備が図られている。昨秋にはソウルから平昌方面に伸びる高速道路が新たに開通し、これまで3時間かかった道のりが2時間に。また、仁川国際空港から江陵を結ぶ高速鉄道も今年12月に開業予定で、五輪期間中は1日15往復運行。平昌までの所要時間は98分、江陵までは111分と見込まれる。

 その江原道は北朝鮮にもまたがり、軍事境界線で南北に分かれている。北朝鮮側にもスキー場があり、同国が五輪会場としての提供を持ちかけたこともあり、韓国内での「それでは平昌五輪が平壌がピョンヤン「五輪になってしまう」とのジョークもうなずける。こう書くと物騒な印象も与えてしまうが、山間部の自然豊かな江原道は日本でも大ヒットしたドラマ「冬のソナタ」のロケ地として一躍その名をはせた。日本を中心に東南アジア各国からファンが訪れ、「冬ソナ」効果で外国人観光客が初めて年間100万人の大台を突破。60の寺と8つの庵から成る月精寺がウォルジョンサ「は、ヨン様ことペ・ヨンジュン自らがテンプルステイを体験した場所とあり、今なお多くの観光客が訪れる。昨年の平昌郡への外国人観光客は約270万人となっている。

 韓国では1988年ソウル五輪大会以来2度目の五輪。そして2020年東京夏季五輪、22年北京冬季へとアジアで3大会続く五輪の先陣を切る形となる平昌五輪。それだけに、是が非でも成功を収めなければならない。ハード面の整備については、組織委員会によると、競技施設は2月時点で97%が完成。選手村は9月完成予定だという。一見、順調に見えるが、昨年7月に着工した開会式、閉会式が行われる五角形のメインスタジアム(3万5000人収容)の進捗(しんちょく)率はまだ40%ほど。当初はドーム構想だったが、建設費が1226億ウォン(約120億円)に抑えられたことから経費節減で屋根なしに。年々、暖冬化傾向にある平昌郡とはいえ、気温が氷点下10度以下になる日も多いことに加え、開会式は夜に行われる。観客には毛布の配布が検討されているというが、いてつく寒さの中で熱気あふれる応援ができるのか。気がかりではある。

 五輪組織委員会の李熙範(イヒボム)委員長が「もう五輪は始まっている」と語るように、2月から4月中旬にかけて20近いテスト大会が開催中。2月18日にはその一つであるフィギュアスケート四大陸選手権の女子フリーを観戦し、三原舞依の初出場初優勝の快挙を目の当たりにする幸運に恵まれた。平昌五輪新設競技場の第1号として昨年12月に完成し、本番の会場ともなる江陵アイスアリーナには翌19日に男子フリーに出場する羽生結弦の熱狂的ファン、「ユズリスト」の姿も。東京から来たというOL4人組は「昨年末に大阪で行われた全日本選手権ならチケットは1日1万2000円したが、この大会では3日間通しのスタンド席で1万3000円。行動力のあるスケヲタにとっては韓国に来る方が安い」と鼻息が荒かった。

 一方で、同会場にいた江原道でゲストハウスを営む鄭真娥(チョンジナ)さん(36)は「政治的に問題があるので、正直、盛り上がりは感じられない」と言う。朴槿恵(パククネ)大統領を巡る一連の政治スキャンダル。1月には五輪を担当する趙允旋(チョユンソン)文化体育観光相が職権乱用の容疑で逮捕されると、一部では「五輪開催返上」との強い批判の声も出たという。国内の政治的混乱が五輪にも暗い影を落としているのは確かなようで、前出の李熙範委員長が「五輪期間中は“エブリデー・フェスティバル”が目標。そして五輪後も江原道を文化観光名所として世界に残したい」と語ったが、アジアでは日本以外で初めてとなる冬の祭典の足音はまだ遠い。そんな印象を受けた今回の旅だった。

 ◆平昌五輪 18年2月9日に開幕。主に雪上競技が行われる平昌は避暑地で、氷上競技が行われる江陵はビーチリゾートで埼玉県秩父市の姉妹都市。平昌ではスノーボードの男女ビッグエア、アルペンスキー混合団体、スピードスケートの男女マススタート、カーリングの混合ダブルスの4競技6種目が初採用される。一方でスノボードの男女パラレル回転が外れ、98種目を実施したソチ五輪との比較では4種目多い102種目でメダルが争われ、約95の国・地域から3000人の選手の参加が見込まれている。パラリンピックは3月9〜18日。

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2017年3月9日のニュース