羽生、NHK杯出場絶望…全治2~3週間、ファイナルもダメ

[ 2014年11月11日 05:30 ]

8日のGPシリーズ中国杯で頭部と顎を負傷した羽生

 日本スケート連盟は10日、フィギュアスケートGPシリーズ第3戦・中国杯(上海)で頭部などを負傷した、ソチ五輪金メダリストの羽生結弦(ゆづる、19=ANA)が受けた精密検査の結果を発表した。「頭部挫創、下顎挫創、腹部挫傷、左大腿挫傷、右足関節捻挫」で全治は約2~3週間の見込み。脳に異常が見られなかったのは不幸中の幸いだが、17日後の28日に開幕するNHK杯(大阪・なみはやドーム)出場は絶望的だ。

 車いす姿の緊急帰国から一夜明け、羽生の精密検査の結果が明らかになった。頭部と下顎が、皮膚も損傷する「挫創」。腹部と左太腿は、皮膚に傷が付かず内部組織が損傷する「挫傷」だった。

 他にも右足関節捻挫と診断され、全治は約2~3週間の見込み。5カ所のケガ以外に中国杯欠場を検討するほど腰にも不安があり、意欲を見せていたNHK杯出場は絶望的だ。仮に2週間で完治しても調整期間は1週間足らずで、万全の状態は望めない。羽生はコメントを発表し、治療に専念する考えを示した。

 「皆さまにはご心配とご迷惑をおかけしてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいですが、まずは、ゆっくり休み治療したいと思います。今後のスケジュールについては、ケガの回復具合をみながら検討したいと思います」

 悲劇が起きたのは8日、男子フリー直前の6分間練習だった。かなりスピードが出た状態で、羽生と閻涵(エン・カン、18=中国)が正面衝突。羽生は頭と顎から流血し、しばらく動けなかった。立ち上がっても足元がおぼつかなかったが、止血後にフリーを滑りきって2位。エキシビション出演を取りやめて前日(9日)に緊急帰国すると、成田空港から病院に直行して都内の病院で精密検査を受けた。入院はしておらず、当面は拠点のカナダに戻らずに地元の仙台で静養するとみられる。

 ラグビーなど他競技ではドクターストップがかかる脳振とうが懸念される中、羽生が「演技したい」と直訴しての強行出場には賛否両論が巻き起こった。日本連盟が発表した検査結果で、脳に異常がみられなかったのは不幸中の幸いだ。日本チームはドクターを帯同していなかったため、患部縫合など現地での応急処置は米国チームのドクターが行った。日本連盟は、今後の医療態勢のあり方について検討する方針を固めている。

 NHK杯を欠場すれば獲得ポイントは中国杯2位の「13」にとどまり、GPシリーズのポイント上位6選手で争うファイナル(12月、スペイン・バルセロナ)の出場権は得られない。自身に妥協を許さない19歳は「今季こそ結果が問われる」と話しており、五輪王者としての強い責任感を持っている。日本男子初のファイナル連覇にも意欲を燃やしているが、この状況でNHK杯を欠場することは、恥でも無責任でもない。誰もが想像できないスピードで世界一になった不屈のプリンスには、羽を休める時間が必要だ。 

 ▽ファイナルへの道 GPシリーズは各大会ごとに1位15点、2位13点、3位11点、4位9点…8位3点(アイスダンスは6位5点まで)と順位に応じたポイントが与えられる。出場2大会の合計ポイントの上位6選手が、最終戦のファイナルに進出。中国杯で2位に入った羽生は現在、13点。09~10年シーズンは出場ラインが22点、10~11年シーズンから昨季までは24点が必要だった。最近は3季連続して9位の選手でも18点を獲得しているため、NHK杯欠場の場合、羽生のファイナル進出はない。

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