受検者1人…入門者過去最少 深刻相撲人気の低迷

[ 2012年11月2日 06:00 ]

新弟子検査の体格検査に合格した1メートル83、164キロと恵まれた体格の佐藤(左)。右は師匠の玉ノ井親方

 九州場所(11日初日、福岡国際センター)の新弟子検査が1日、福岡市内で行われたが、受検者は千葉県富津市出身の佐藤史靖(17=玉ノ井部屋)だけだった。受検者1人は1999年同場所の2人を下回る最少で、10年の名古屋場所以来3度目(最低は07年名古屋場所の0人)。今年の通算新弟子数は現在55人で、佐藤が合格しても年6場所制後の58年以降最少だった昨年の60人を下回る。相撲人気の低迷は深刻な状況だ。

 大相撲を取り巻く環境を象徴するような、さむ~い光景だった。審判部の鏡山部長(元関脇・多賀竜)に松ケ根副部長(元大関・若嶋津)らが顔をそろえた新弟子検査会場。そこにやってきたのは、玉ノ井部屋で“見習い”をしている佐藤1人だけだった。最盛期の1963年には九州場所の受検者は31人もいたが、ここ数年は1桁の前半も珍しくなく、03年以降2桁は一度もない。

 協会の副理事として身体検査に立ち会った巡業部の大山副部長(元幕内・大飛)は、就職先としての相撲界の人気のなさに「だんだん(新弟子が)少なくなっていくね。寂しいね」と残念そうな表情を見せた。部屋持ち親方として新弟子集めに苦労しているという松ケ根親方も「1人だけでもいただけ良かった」と苦笑いするしかなかった。

 協会もただ手をこまぬいてきたわけではない。今年5月の夏場所から新弟子検査の体格基準を1メートル73、75キロから1メートル67、67キロに緩和し、運動能力テストも廃止。さらに来年から“就職場所”といわれる春場所だけは、中卒に限り体格基準を1メートル65、65キロにハードルを下げるリクルート対策を打ち出している。

 それでも、07年の力士暴行死事件、08年の大麻問題、10年の野球賭博問題、11年の八百長問題など不祥事が続いた影響は大きく力士志願者も激減。今年の通算の新弟子数は年6場所制が定着した58年以降最少記録を更新することが確定した。

 新弟子の減少は協会の屋台骨も揺るがす。今年に入ってから既に51人の力士が引退。鏡山審判部長は「入ってくるより、辞める方が多くなるかもしれない。そんな状態が続くようでは力士がいなくなる。新弟子は財産。ない知恵を絞って対策を考えないといけない」と危機感を募らせていた。

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2012年11月2日のニュース