武蔵川理事長“最後の大仕事”文科省に直談判

[ 2010年8月6日 06:00 ]

職務復帰し会見する武蔵川理事長

 病気で療養していた日本相撲協会の武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)が5日、東京・両国国技館で開かれた臨時理事会で職務復帰した。理事会後の会見では、7月21日に胃がんの手術を受けていたことを公表し、当面は理事長を続けることも明言した。すでに辞任の意向を固めている武蔵川理事長は、来週中にも監督官庁の文部科学省に復帰報告を行い、自身の後任に“まわし組”を起用するよう直談判するもようだ。

 7月4日の理事会以来約1カ月ぶりに公の場に姿を見せた武蔵川理事長はやつれた表情で謝罪した。「名古屋場所初日に大相撲を愛してくださっている皆さまにおわびすることを決めていたが、かなわなかった。この場を借りて、心からおわび申し上げます」。謹慎期間中に体調を崩したことを明かし、7月12日に胃がんが判明し、同21日に摘出手術をした事実も公表した。しかし、進退については「とにかく今は協会員全員で難局を乗り切るため、意見をまとめ上げていかなきゃいけない」と明言を避けた。
 武蔵川理事長は当初、理事会で辞意を表明する予定だった。だが、突然態度を変えた。理事会前、後任人事が固まっていない上に復帰した直後に辞任すると体裁も良くないとして協会役員が続投するよう説得。武蔵川理事長も応じ、当面は続投することになった。しかし、体調面の不安や賭博問題など一連の不祥事の引責で辞意を固めたとみられ、今月中に辞任する見通しは変わらない。12日と23日に理事会が予定されており、早ければ12日の理事会で態度を明らかにする可能性がある。
 そして、理事長としての最後の大仕事として文科省との“直接対決”に臨む。相撲協会、文科省の関係者によると、武蔵川理事長は来週中にも文科省を訪れ復帰報告を行うが、その席で理事長人事に言及する見込みだ。川端文科相は外部からの招へいを提言しているが“まわし組”の起用を訴えることになる。
 この日、武蔵川理事長復帰を聞いた川端文科相は「武蔵川理事長が戻ってきたのなら、武蔵川理事長のリーダーシップでやるのが当然。独立委員会から諮問が出たら、それをしっかり求めていく」と言葉を選びながら話した。相撲協会内でも後任候補は一本化されていない。「ガバナンス(統治)の整備に関する独立委員会」も理事長補佐を設置し外部から招へいする案を12日の会合でまとめる方向。その案が採用されれば理事長の人選にも影響がある。後任選びは混とんとしている。

 ≪体調を気遣う声相次ぐ≫胃がんの手術を受けていたことを公表した武蔵川理事長に対し、周囲から体調を気遣う声が相次いだ。陸奥広報部長(元大関・霧島)は「辞めるのは簡単だけど、続けるのは大変。体調が心配だ」と険しい表情。同部長によれば体重が10キロも落ちた上に首の痛みも発症しているという。武蔵川部屋では朝稽古後、部屋付きの藤島親方(元大関・武双山)が力士全員に病状を説明した。幕内・武州山は「復帰という話はなかった。安心というより体の方が心配。まだちょっとやせているし…」と気遣った。

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2010年8月6日のニュース