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【三宅哲夫の旅ヂカラ漫遊記】町のぞみ待ち人望む松江城

[ 2016年2月10日 05:30 ]

5番目の国宝に指定された千鳥城こと松江城。「ちどり娘」の渡辺さんも笑顔
Photo By スポニチ

 昨年7月、国宝に指定された松江城見たさに島根県松江市に出掛けた。日本に現存する12天守(城)の一つで天守の国宝指定は姫路城(兵庫県)、松本城(長野県)、犬山城(愛知県)、彦根城(滋賀県)に次いで63年ぶり5件目になるが、別名「千鳥城」と呼ばれるほどの美しさ。遊覧船での「堀川めぐり」も楽しく、今も残る江戸時代の風情にどっぷりと浸った。

 関ケ原の合戦の後、松江開府の祖・堀尾吉晴によって1611年(慶長16)に築城された松江城。白と黒のコントラストが美しい外観4重、内部地上5階、地下1階の構造で、松江の町並みを見守るように優雅にたたずんでいた。

 正面から見ると、中段には千鳥が羽を広げたような三角形の屋根(入母屋破風=いりもやはふ)。「望楼型天守といって、織田信長の安土城から豊臣秀吉の大坂城へと続く正当な天守の形なんです。現存の天守で受け継ぐのは松江城だけ」とは観光ガイド「ちどり娘」の渡辺由佳子さん(26)。あでやかな着物姿が千鳥城によく似合う。

 内部にも建築的特徴は多く、柱には高さ2階分の通し柱を多用し、階段には防火防腐対策と上げ下げを容易にするため桐を使用。最上の5階からは360度にわたり松江市街や宍道湖が見渡せるが、渡辺さんのイチ推しはハート形をした石垣と木目。最近は「縁結びスポット」として探しに訪れる歴女も多いという。

 そんな女性に人気なのが、ほぼ江戸時代のまま残存する堀を遊覧船で周回する堀川めぐり。2コースあり、船頭さんの案内で約4キロを約50分。寒さが気になったが、乗ってみると船内にはコタツが置かれ快適。水面から見る天守はロマンチックで、江戸情緒がたっぷり。大小16の橋をくぐる際には、低い橋で船の屋根とともにコタツぎりぎりまで身をかがめるなど、スリル感も味わった。

 下船後は武家屋敷などが並ぶ塩見縄手通りを散策し、松江城を望む高台の「明々庵(めいめいあん)」でひと休み。堀尾氏、京極氏の跡を継いだ松平藩7代藩主松平不昧(ふまい)の好みで1779年(安永8)に建てられた茶室がある茶庵で、抹茶と江戸時代から伝わる和菓子「菜種の里」「若草」を楽しんだ。2種類の和菓子は不昧が持っていた100種類のレシピから生まれたともいわれ、日本三大和菓子どころの松江を代表する産品。そのこだわり、繊細さに城下町・松江の底力を見る思いだった。

 ≪江戸時代香る「菅谷たたら山内」≫松江から車で約50分。奥出雲地方には古くから「たたら製鉄」を行っていた集落があり、松江藩の鉄師筆頭御三家の一つ、田部家(雲南市吉田町)が経営した「菅谷たたら山内」(山内とは仕事場と住居一帯のこと)の菅谷高殿を見学した。たたら製鉄とは粘土で築いた炉に砂鉄などを入れ、ふいごを踏んで風を送りながら鉄を造る方法で、刀や農耕具など鉄の需要が急増した江戸時代には国内産の鉄の9割を産出。菅谷高殿は日本で唯一現存する高殿式“製鉄工場”で、1751年(宝暦元)~1921年(大10)の170年間にわたって操業が続けられ、最盛期には年間200トンの鉄を生産したという。中には炉やふいごなど当時の装置が残されているが、足を踏み入れると空気が張り詰めおごそかな雰囲気。たたら製鉄をモデルにした映画「たたら侍」も今年公開予定で、今後注目を集めそうだ。

 ≪どぶろくに合う田舎料理≫菅谷たたらへ向かう途中、ユニークなグルメスポットを訪ねた。JR木次線木次駅からタクシーで約10分の「食の杜」にある「かやぶき」。築140年の古民家で地元主婦が作る田舎料理が20品以上、バイキングで味わえるのだ。地域はどぶろく特区で「どぶろくに合った料理が中心」(主婦)。どぶろく1合瓶付きで2000円。営業は月4日で、今年は3月から。要予約=(電)0854(42)0238。 

 ▽行かれる方へ JR山陰本線松江駅からバス10分。車は山陰道松江西ICから10分。松江城登閣料560円。ちどり娘ガイド料800円から。堀川めぐり1230円など。明々庵入館料410円、抹茶&菓子410円。問い合わせは松江ツーリズム研究会=(電)0852(23)5470、明々庵=(電)同(21)9863。

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