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【川手優子 酒とニクの日々】あふれ出る三ジュ~奏

[ 2016年1月27日 05:30 ]

<川手優子 酒とニクの日々>花岡商店のタンシチューを堪能する川手優子
Photo By スポニチ

 新年、肉増しておめでとう…とばかりに年齢不詳のぽっちゃり系ライターの川手優子が1月の街へ。訪れたのは西武新宿線西武柳沢駅。都心から程近いにもかかわらずちょい地味な駅近くに美味肉のパラダイスがあった。

 「とにかくなんでもうまいんだ」と“食魔”の友人・S氏は言う。「穴場中の穴場だよ」と付け加えた。

 紹介された店は閑散とした駅前のロータリー近く。一見こぢんまりとしたカフェのように見える。奥のカウンターで迎えてくれたのはハットとスマイルマークのような笑顔が印象的な店主の花岡良一さん(45)。18歳から飲食の道に入り、洋食からエスニックまでいろいろな料理を経験するうちに、自分の作りたい料理が受け入れられるのかを試したくなって店を開いたという。供するのは「なじみはあるけれど、ありきたりではない」メニュー。

 人気の3品を順番に食べていく。まずは香辛料を加えた塩水に1週間漬け込んだ「自家製ロースハム」。程よい塩加減としっとりとした肉の歯触り。やや厚めのカットで噛(か)みしめたときのみっしりとした“ハム感”がたまらない。

 次は「皆さん驚きます」とコメント付きの「ジューシーメンチカツ」。小ぶりで美しい俵形の衣にナイフを入れた瞬間、アッと叫んだ。ジュワワワワ~ッ!まるでルルドの泉のようにあふれ出てくる大量の肉汁。これはヤバい!と慌てて頬張ると、挽(ひ)き肉と熱々の脂ジュースが口の中で混じり合う。バランスよくうま味のみが引き立つ洋食仕立てのメンチだ。

 どこの銘柄肉なのかと思ったが、聞けば材料は至って普通のもの。

 「高い食材じゃなくてもこんなにおいしくなるってことを感じてもらいたいんです」

 お供の酒はオリジナルの「洋風ホッピー」。ジンをノンアルコールビールで割るというストロングな飲み物だが、スッキリして切れがあり肉料理にはぴったりだ。

 そして「タンシチュー」。年に何回かは食べたくなるメニューだが、なかなか好みの味に巡り合わない。しかしこれはイケそう…。うん。2種類の味噌が隠し味。真っ黒なデミグラスソースはとろみ加減も絶妙でコクはあるけどしつこくない。舌が皿を舐(な)めたいと催促してきたところで焼きたてパンが出てきた。

 仕込み、調理、接客とすべてをひとりでこなし満席になっても、丁寧に素早く料理を作る。店内をくるくると動き回る姿はぜんまい仕掛けの人形のようだ。「同じものを作っていたら飽きちゃう。もし発想が浮かばず新しい料理が提供できなくなったら引退します」とまるでアスリートのような心構え。

 きょうは泥酔すまい、と食べ続ける。肉は夜更け過ぎにおなかの肉へと変わるだろう…と思いながら。(川手 優子)

 ◆花岡商店 開店は2012年。顧客は、地元の女性客を中心に上は80歳代まで幅広い年齢層。口コミで訪れ、リピーターになる客も多い。コースメニューはなく一品料理のみ。旬の食材を使った洋風創作料理が自慢。ワインはグラスで提供、が基本。仕事帰りなどに訪れ、うまいつまみで一杯…普段使いできる店だ。予約があれば昼のパーティーも受け付ける。東京都西東京市柳沢6の1の11、レヂオンス柳沢1F。(電)042(452)6412。営業時間は午後6時~深夜0時。月曜日、第1、第3火曜日休み。

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