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【全国ジャケ食いグルメ図鑑】これぞ大阪?特別なスープ

[ 2015年12月18日 05:30 ]

大阪・日本橋「福家」の店構え
Photo By スポニチ

 人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんが外観だけで店選びをする「全国ジャケ食いグルメ図鑑」。絶滅危惧種とは生き物だけではありません。グルメ界でも日本固有のメニューとシステムで発展してきたのが“町の大衆食堂”。発見する機会が少なくなってきましたが、大阪でとっておきの“在来種”を見つけちゃいました。

 仕事で大阪に行った。宿が近鉄日本橋駅の近くだったので、周辺を探索。アーケード街を歩いていて、遠くに見えたこの店の看板を見た瞬間「もしや…」と名店の期待が膨らむ。

 屋号が「福家」。古典的な名前2文字。「居酒屋」とか「食事処」と書いてない潔さ。

 店前まで来て「おお!イメージ通り。いや、こののれん、想像以上のジャケット(店構え)だ」とうれしくなる。飲食店らしからぬ、おたふく顔で日本髪女性の絵入りのうぐいす色ののれん。やはり何もうたい文句がない。

 キリンと櫻正宗の宣伝が入っていることで、酒も飲めることは分かるが、飲み屋という感じでもない。ブラックボードに「本日5時より陳列のおかず全品半額です」と書いてある。おかず…やっぱり、これは食堂だ。ジャケットは新しいが、絶対に古くからある老舗食堂と読んだ。入店!

 おお、明るい。清潔感ある。でも活気ある。飲んでいる人と食べている人が両方いる。いいぞ。店のオバチャンが「傘はそこの傘立てに入れたってな。2万円もする傘なら席に持ってもらってもええけど」。バリバリの大阪弁でいきなり先制パンチ。ますますうれしくなる。

 席に着いてから、見渡すと入り口脇に「陳列のおかず」があった!ショーケースにいろんなおかずがぎっしり。スバラシイ。しかもこれが全部半額!自分でこれを席に持っていって、ごはんや汁を頼む方式。おかずはあっためてもくれる。東京では絶滅危惧食堂だ。

 ボクは肉じゃが(400円)、黒豆(200円)、じゃこおろし(300円)、お新香(150円)、そして正体不明の「えんどう玉子」(300円)と「カス汁」(300円)にごはんを頼んだ。ごはんを(小)にしたら「え?小か?小食やな」とオバチャン。ひと言いわないといられない大阪人気質。

 えんどう玉子がヘンだった。透き通った汁の中にえんどう豆が入っていて、真ん中に温泉卵。汁をすすってみると、これが甘い。どういうタイミングで食べたらいいのか分からない。大阪ローカルのおかずか。カス汁は、酒かすの入ったのっぺ汁的な汁。あったまる。

 おかず、全部おいしい。さらにオバチャンが「これサービスな」と言って付けてくれた昆布煮がちょっとすっぱくてウマイ!

 隣の6人組は普通に飲んで盛り上がっていたが、ひとりで淡々と夕食を食べている人もいる。店の空気に上品な人情味があるイイ店だ。またアタリを引き当てた。お勘定の時オバチャンが古い五つ玉ソロバンで計算したのも出来過ぎ(店員にはお姉さんもいて、その人は電卓)。今度はここで飲んでみたい。おおきに! 

 ◇福家(ふくや) 1948年(昭23)創業。焼き魚350円、昼定食650円~。大阪市中央区千日前1の6の13、日本橋駅から徒歩5分。(電)06(6211)5338。月~金曜午前11時~午後9時。近くにJRAの場外馬券場があり土日祝は午前9時開店。木曜定休。

 ◆久住 昌之(くすみ・まさゆき)1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として月刊ガロにおいて「夜行」でデビュー。94年に始まった谷口ジローとの「孤独のグルメ」はドラマ化され、新シリーズが始まるたびに話題に。舞台のモデルとなった店に巡礼に訪れるファンが後を絶たない。フランス、イタリアなどでも翻訳出版されている。

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