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【さくらいよしえ きょうもセンベロ】モツべきものは義理人情

写真に納まる親子三代(右から)店主・早川成次さん、母・悦子さん、次男・代悟さん
Photo By スポニチ

 暑い夏はもつ焼きでパワーチ ャージ!とばかりに、「これまで訪れた居酒屋は3000軒」というライター・さくらいよしえが訪れたのは東京・森下。赤提灯(ちょうちん)が目印の「三徳」で出合ったのは「純レバ」。きりりと冷えた焼酎ハイボールによく合う。

 食堂さながらの明るい店内。漫画本の棚に白い品書きの短冊。黒光りしたなまはげが2体、なかなかの存在感で見下ろしている。そのなまはげに負けず劣らずいい風合いを醸すマスターだが、秋田には縁もゆかりもなく生まれも育ちもここ森下。昨今、オシャレな店が誕生している町で独立独歩なもつ焼きの名手である。

 「毎日、芝浦の食肉市場から仕入れるのは、豚のタン(舌)からのど、はつ(心臓)がつながったままのを2頭分。ほぼ売り切ります」。それに、“シロ”は大腸でもあぶらがのったマルチョウのみをつかい、レバーはうっとりするような淡い桜色だ。

 甘辛のみたらし風味のタレは一見濃厚だが、新鮮なもつの味を殺さない。

 マスターが子供の頃から食べていたという鶏のレバーを用いた「純レバ」も、きりりとした味わいで、天羽の梅をつかった下町ハイボールがもう、やたらと進んでいけないのだった。

 創業は36年前。思いがけない始まりだ。高校を中退したマスターが、銀座でコックの道を歩き始めていた頃、母上が働いていた居酒屋の店主が突然出奔する。

 そこで、大家から代わりに店をやらないかと持ちかけられたのが当店だ(そんなことってあるんだ…!)。新たな屋号「三徳」は、「父が江戸時代、泰平の世を築いた徳川将軍にちなんで命名」。弟を加えた家族4人で始めたが、それだけでは食べていけないと、マスターは「口減らしっていうのかな。私は外に働きに出ました」。

 しかしその後、弟が夭逝(ようせい)、父親も他界すると、マスターが柱となり母上、そして弟の幼なじみが右腕となり店を切り盛りする。下町の奇縁と団結の物語。

 夕方5時になると、地元っ子らしいサンダル履きの女子2人組がやってきた。小上がりで生ビールをうまそうに飲んでいる。間もなく若い男子もやってきたと思ったらマスターの息子だ。バイト代をためて大型バイクを買うのが夢らしい。まさかの親子孫の3代そろい踏み。そろいのTシャツには、「義理人情挨拶愛情」の文字が躍る。「私がやんちゃをしてた頃からの合言葉です」と父が言えば、「いらっしゃいませ!」若きエースが声を張る。

 代々続く泰平酒場、おいしい徳にあやかれます。(さくらい よしえ)

 ◇三徳 創業は1981年(昭56)。マスターの早川成次さん(57)、母親の悦子さん(79)、息子の代悟さん(18)が店に立つ。店名の由来は、「徳川三代将軍」説のほか仏教用語の「三徳」(智、仁、勇)、坂本龍馬が使用した財布に由来…の説も。テーブル、座敷、1人飲み客用のカウンターも。昼はランチも。夜は消費税別税だが「昼は込み。(消費税を)とったら悪いような気がして…」と心優しいマスター。東京都江東区常盤2の11の1。(電)03(3631)9503。営業は午前11時半〜午後1時、午後5時から深夜0時。日曜、祝日休業。

 ◆さくらい よしえ 1973年(昭48)大阪生まれ。日大芸術学部卒。著書は「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)、「今夜も孤独じゃないグルメ」(交通新聞社)「にんげんラブラブ交叉点」(同)など。

[ 2017年7月14日 12:00 ]

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