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【コラム】戸塚啓

U―23日本代表 シリア戦のポイント

[ 2012年2月3日 06:00 ]

関塚監督(左)と話す原強化委員長
Photo By スポニチ

 2月5日のロンドン五輪最終予選は、国内組だけで戦うことになった。合流が期待された大津祐樹は、所属先のボルシアMGが手放さなかった。

 大津に合流してもらいたいのはもちろんだ。ブンデスリーガはシーズンまっただ中なので、彼にはフィジカルコンディションの不安がない。

 ただ、ドイツでの大津は外国人選手としてプレーしている。リーグ戦が行なわれているさなかに、日本協会の要望がすんなり受け入れられたら、それもまた素直には喜べない。しかたのないことだと、割り切るしかないと思う。

 大津が合流できなくも、チームが危機的状況に陥るわけではない。大津が2試合連続弾を決めた昨年11月の2試合には、清武弘嗣と原口元気が招集されていなかった。日本代表のW杯3次予選が優先されたためである。

 今回は清武が招集されている。中盤の構成に苦慮することはない。チームのベースとなっている4-2-3-1のフォーメーションに、無理なく選手をはめることができる。

 5日のシリア戦は予選突破への大一番だが、チーム結成からの歩みを振り返れば、大津抜きで戦ってきた試合のほうがはるかに多い。彼抜きでも戦えるはずだ。

 ゲームのポイントはむしろ、コンディションがどこまで仕上がっているのかにある。

 Jリーグ各クラブは、リーグ戦開幕の5週間前から準備を始めるのが目安だ。それに対してU-23代表は、1月15日からトレーニングをスタートさせた。シリア戦のちょうど3週間前だ。調整はかなりの急ピッチである。

 通常より短い時間で実戦を迎える今回のようなケースでは、時間の短さを補うあまりに負荷がかかり過ぎたり、たくさんの要素を練習に詰め込んだり、といったことになりがちだ。スタッフ側が練習量を調整しても、選手が知らずしらずのうちにオーバーワークになってしまうこともある。

 そうしたことを踏まえると、ここまでケガ人を出さずに調整を進めてきたのは評価されていいだろう。関塚監督や里内コーチのマネジメントはもちろん、各選手が始動時期から逆算して自主トレをしてきたことによるものだろう。

 気がかりがあるとしたら、ゲーム体力と試合勘だ。

 シリア戦をまえにカタール、イラクと練習試合を行なったが、少なくともあと1試合、可能ならあと2試合は消化したかった。3週間という準備期間では2試合が限度だったのだろうが、実戦のなかでどれだけ動けるか、それもいつもどおりに動けるのかには、一抹の不安が残る。

 とはいえ、ロンドンへの道を開くのは他でもない選手自身である。シリア戦の重要性は、他ならぬ彼らが誰よりも理解している。一切の言い訳を排除して戦うはずだ。

 山村和也、清武、原口らを欠いた昨秋のバーレーン戦とシリア戦をまえに、選手たちは「誰かがいないからできないではなく、いまいるメンバーで勝利をつかみたい」と口を揃えていた。今回も同じだ。「大津がいないから勝てなかった」などとは、絶対に言わせたくないはずだ。大津の不在も、選手たちの闘志に火をつける要因になっている。

 シリアを2-1で退けた昨年11月の試合後、関塚監督は「彼の貪欲な姿勢は、我々のチームに力を加えてくれた」と大津の働きを讃えた。続けて、こうも話している。

 「それをちゃんと、このチームに植えつけていきたい。やはり一人ひとりのプレーの責任感、使命感と言いますか、そういうものを大事にしていきたい」

 このチームが結成当初から見せてきたグループとしての一体感を、責任感と使命感で包み込むことができていれば──ロンドン五輪出場を手繰り寄せることができる、と僕は思う。(戸塚啓=スポーツライター)

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