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W杯予選 初戦は3分1以上の重み 勝負は調整の成否とスカウティング

[ 2014年6月3日 15:55 ]

 日本代表が南アフリカ大会で決勝トーナメントに進出できた要因のひとつは、高地対策を含めたコンディション調整の成功と、相手チームの緻密なスカウティング(分析)だろう。(元日本代表コーチ 小倉勉)

 高地対策は事前に国立スポーツ科学センターなどで体を慣らし、スイスで調整、そこから南アフリカに入った。標高が高く、空気が薄いことでボールが予想以上に変化した。それに、高地はボールが思ったよりも飛ぶ。ゴールキックが伸びたり、ミドルシュートが決まったり。デンマーク戦で本田が決めたFKもボールが思った以上に変化した。逆にオランダ戦でスナイデルに決められたゴールもGK川島の予想以上に変化した。GK泣かせの大会だったが、全般的には日本は高地対策のお陰でコンディションもよかったし、戸惑わずに済んだことはプラスだった。

 スカウティングも細かくやった。私とスタッフが大会直前に手分けして対戦相手の最終調整をチェック。私はスイスのキャンプ地から南アフリカに先乗りし、デンマークとの練習試合を視察した。

 そこでエースのベントナーがケガで本調子ではないことを把握。カメルーンは中心選手のソングとルグエン監督が対立していることも分かった。戦術だけでなく、相手選手の状況も細かく調べる。代表でレギュラーでも、所属チームで試合に出ていないこともある。情報もいろいろと入って来るが、すべて本当だとは限らない。百聞は一見にしかずだ。

 私たちは日本の各選手の状態が頭に入っているため、それを基準に相手を見ることができる。「ここは日本の方がいい」「相手のほうが上だから注意」……。カメルーンは左サイドバックが攻撃的な反面、守備に難点があり、そこは狙い目と感じていた。実際カメルーン戦で松井が右サイドからクロスを上げて、本田が先制ゴールを決めた。細かいことだが、こういうことの積み重ねが勝利につながった。

 ワールドカップは短期決戦、調整に失敗すると取り返しがつかない。1次リーグ3試合のうち、初戦は3分の1以上のウエートがある。いかにいい準備をするか、それで全てが決まる。

 ◆小倉勉(おぐら・つとむ)1966年(昭41)7月18日生まれ、大阪府出身の47歳。天理大卒業後に渡独し、ブレーメンのユースなどを指導。帰国後、92年から市原(現J2千葉)で育成部やトップチームのコーチ、強化スタッフなどを歴任した。06年からイビチャ・オシム監督、08年からは岡田武史監督の下で日本代表コーチを務め、10年W杯南アフリカ大会で16強入り。12年ロンドン五輪では関塚隆監督の下でコーチを務めて4強入りを支えた。五輪後の12年9月からJ1大宮でコーチ、テクニカルダイレクターを務め、13年8月から監督。14年からJ1甲府でヘッドコーチを務めている。

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2014年6月3日のニュース