作家・森村誠一さん死去 90歳 「人間の証明」「悪魔の飽食」幅広いジャンル手掛け400冊以上刊行

[ 2023年7月25日 05:00 ]

森村誠一さん
Photo By スポニチ

 映画化もされたベストセラー小説「人間の証明」などで知られる作家の森村誠一(もりむら・せいいち)さんが24日午前4時37分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。90歳。埼玉県出身。葬儀は家族葬で行う。後日お別れの会を開く予定。生涯で400冊以上の著作を刊行。社会的な問題を取り上げたミステリーのほか、ノンフィクションなど幅広いジャンルの作品を手掛けた。

 最近は入院生活を送っていた森村さん。関係者によると「1週間ほど前から呼吸が苦しくなり人工呼吸器をつけていた」という。23日深夜に容体が急変。危篤状態となり苦しむことなく、家族にみとられながら静かに息を引き取った。関係者は「ご遺族からは、昼寝をしているような穏やかな顔だったとうかがっています」と明かした。

 森村さんは青山学院大を卒業後、新大阪ホテル(現リーガロイヤルホテル)に就職。ホテルニューオータニなど、大阪や東京の一流ホテルで10年ほどホテルマンとして勤務した。その傍ら小説を書き、65年に「サラリーマン悪徳セミナー」でデビューした。
 当初はヒット作に恵まれなかったが、69年にホテルを舞台にした本格ミステリー「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞。その後も「新幹線殺人事件」や「腐蝕の構造」などの話題作が続き、ミステリー作家として頭角を現した。社会的なテーマとトリックを融合した作品が人気を集めた。

 76年には、生涯の盟友となる角川書店元社長の角川春樹氏(81)の依頼で「人間の証明」を発表。高度成長期に戦争の真実を突きつけるミステリーだった。翌77年に松田優作さん主演で映画化され大ヒット。森村さんもホテルマン役で出演した。小説も770万部を超えるベストセラーになった。「青春の証明」(77年)に続く「野性の証明」(同年)も78年に高倉健さん、薬師丸ひろ子(59)の共演で映画化され大ヒットした。この3作は「証明3部作」と言われる。

 角川氏による映画と小説を同時に売り出す手法は「メディアミックス」として話題を集め、同作の成功をきっかけに角川書店も大きく成長。森村さんもベストセラー作家としての地位を築いた。角川氏との絆は深く、93年にコカイン密輸事件で角川氏が逮捕された際にも、自ら法廷に出廷し無罪を訴えた。

 歴史・時代小説なども執筆。81年に発表したノンフィクション「悪魔の飽食」は、旧日本軍の「731部隊」の実態を追及し、社会に衝撃を与えた。写真の誤用でバッシングを受けながらも全3部を書き上げた。

 晩年はうつ病や認知症に悩まされながら執筆活動を続けた。21年には老人性うつ病に苦しんだ体験をつづった「老いる意味」を刊行するなど、生涯、作家であり続けた。


 ◇森村 誠一(もりむら・せいいち)1933年(昭8)1月2日生まれ、埼玉県出身。12歳で熊谷空襲を体験。青山学院大英文科を卒業後、ホテル勤務を経て作家デビュー。73年に「腐蝕の構造」で日本推理作家協会賞を受賞。「人間の証明」に登場する棟居弘一良刑事を主人公とした「棟居刑事シリーズ」をはじめ、多くの作品がテレビドラマ化された。11年には「悪道」で吉川英治文学賞を受賞した。


 ≪モンゴルロケ激励「胸が熱くなった」反町隆史≫ 07年の映画「蒼き狼~地果て海尽きるまで~」で主演を務めた反町隆史(49)は「テムジンという役に新たな魂を吹き込んでくださいました。心よりご冥福をお祈りいたします」としのんだ。森村さんの歴史小説「地果て海尽きるまで 小説チンギス汗」が原作で、日本とモンゴルの合作で製作された。モンゴルロケには森村さんも激励に訪れたといい「原作に込めた思いを熱心に話してくださいました。胸が熱くなったことを覚えています」と懐かしんだ。


 ▼片岡鶴太郎(テレビ朝日系「終着駅シリーズ」で5作目から主演)森村先生とはテレビ朝日「終着駅シリーズ」のドラマの制作発表の時にご同席いただきました。その後も、撮影時には何度か現場にお越しいただきました。約30年牛尾刑事という役を務めさせていただき先生からも応援のお手紙を頂いておりました。先生の作品で牛尾刑事という役を長く長く務めさせていただきましたこと、ただただ感謝しかございません。先生のご冥福をお祈り申し上げます。

 ▼角川文庫編集部 森村誠一先生が永眠されました。突然のことに言葉もなく、悲しみに暮れております。弊社では「人間の証明」「終着駅」などのベストセラー作品をはじめ、たくさんの著作を刊行させていただきました。心よりご冥福をお祈りいたします。

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2023年7月25日のニュース