王将戦記録係は“アゲアゲさん” 折田翔吾四段「いろいろ吸収できたのは間違いない」

[ 2022年1月24日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将戦第2局第2日 ( 2022年1月23日    大阪府高槻市「山水館」 )

渡辺王将(左)と藤井竜王(右)の対局の記録係を務めた折田四段
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 22、23両日に大阪府高槻市の山水館で行われた第71期ALSOK杯王将戦7番勝負(主催・スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社)第2局では“アゲアゲさん”のニックネームで親しまれるユーチューバー棋士の折田翔吾四段(32)が記録を担当した。

 王将戦での記録係は2010年2月以来、12年ぶり。前回は島根県松江市で行われた第59期第4局、羽生善治王将(当時、現九段)VS久保利明棋王(当時、現九段)だった。

 その一局では、久保が勝って王将位に王手をかける3勝目を挙げている(最終的に久保が4勝2敗で初の王将位を獲得)。当時、折田はプロ棋士養成機関の奨励会に所属する二段だった。

 そのことを伝えると「そうですか、当時は二段だったんですね。封じ手予想は今でも覚えていますよ。結果は外れましたが。記録係自体が6~7年ぶりですね。それからいろいろありましたから…」と、プロ入りまでの苦労した道のりを思い出してか、ちょっぴり苦笑いを浮かべた。

 最初にプロ棋士を目指した若い頃、将棋に専念するため高校を中退してまで挑んだ。だが、多くの天才棋士らがしのぎを削る奨励会の壁は厚く、三段リーグ在籍時の16年、規定により退会となり、夢を一度は断念した。

 ただ、将棋の道は捨てきれず、同年4月にユーチューブで「アゲアゲ将棋実況」という動画配信をスタート。将棋教室も開くなどしていたが、19年にアマ王将戦で準優勝し、プロと対戦できる銀河戦の出場権を得たことが大きな転機となった。

 本戦でも対プロ棋士6連勝で決勝トーナメントに進出し、さらにプロとの直近公式戦の好成績で棋士編入試験の受験資格まで獲得。挑んだ試験も20年2月に見事突破し、一度は諦めていたプロになる夢を実現させたエピソードは有名だ。

 プロ棋士以前の前回と今回で、記録係を担った上での心境の変化は?と尋ねると、折田は「あの時は勉強するんだ、という感じでしたね。今回?すごく楽しめました」と笑顔。一方で「今回、渡辺、藤井両先生の対局を間近で見ることができたのは大きいです。いろいろ吸収できたのは間違いない」という言葉に力を込めた。

 ユーチューブ動画の投稿はプロになった今も続けている。「なかなか両立は大変です。ですが、ファンがいてくれる限りは続けていきたい」ときっぱり。その上で本局の経験を本業である棋士としてのアゲアゲ(=飛躍)にも繋がたいか?には「そうですね」とうなずいた。

 一度は落ちた階段を再び上ってきた将棋界の二刀流棋士。苦労人が、ここからさらにどう成長していくか再び注目したい。(窪田 信)

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