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テレビで見られない古舘伊知郎の過剰さに触れた夜

古舘伊知郎
Photo By スポニチ

 【牧元一の弧人焦点】ぜいたくな空間だった。東京・銀座の商業ビル3階のイベントスペース。窓から、夜の4丁目交差点を行き交う人々を見下ろせた。会場の定員は100人ほど。仰々しいステージはなく、客席と同じ高さに出演者のイスが2つ並べられていた。私と同じテーブルの男性客は優雅に赤ワインのグラスを傾け始めた。

 定刻を少し過ぎると、2人が入ってきた。フリーアナウンサーの古舘伊知郎とクリエーティブディレクターの佐々木宏氏。関係者によれば、古舘は昨年3月末のテレビ朝日「報道ステーション」キャスター卒業以来、トークショーの仕事をしていないが、この日は旧知の佐々木氏との対談形式だったため、出演を決めたという。

 古舘の魅力は、過剰さにあると思う。テレビ朝日の局アナ時代、プロレスの実況をしていて視聴者に「うるさい」と批判され、アナウンス部の上司から「見れば分かるのだから少し黙ってろ」と注意された。しかし、古舘は語り過ぎることを止めるなかった。語り過ぎたからこそ、その実況は伝説となり、フリーアナになった後、国民的番組であるNHK「紅白歌合戦」の司会を務めるまでに至った。

 「報道ステーション」での12年間は、過剰さを封印した時代だった。それは報道番組という性質上、仕方のないことだったろう。では、キャスターを卒業すればどうなるか。報道という規制がなければ、本来の持ち味を十分に発揮できるはずだ。それを問われたのが、昨年11月にスタートしたフジテレビ「フルタチさん」だった。

 番組は改善されて来てはいる。しかし、まだ十分ではない。ほかの司会者たちに比べればもちろん言葉数は多いが、そこに過剰さを感じない。これは局側の編集の問題という気もする。いくら古舘が語り過ぎても番組の流れを整えるためにカットしている可能性がある。最近の収録を取材していないので真実は不明だが…。

 話をトークショーに戻そう。古舘と佐々木氏は、まさに勝手気ままという感じで、およそ2時間にわたって話し続けた。佐々木氏がかつて作ったCMに関することが主な流れだったが、脱線に次ぐ脱線で、話の趣旨が何なのか分からなくなる場面が多かった。常識的なテレビ番組ではほとんどカットだろう。しかし、私にはそれが極めて面白かった。台本に左右されず、予定調和のない展開。これこそが古舘の魅力を十分に引き出すものではないか。

 古舘はこのトークショーで、テレビで放送できないような話をした。それはこのコラムでも詳しく書くことはできないが、某有名ミュージシャンの曲作りの裏側、某大女優の特異な性格、古舘家での珍騒動などなど、そこに間違いなく私が求める過剰さがあった。「フルタチさん」も何が起きるか分からない生放送ならば全く違う色合いの番組になるのではないか。そんなことも考えた。

 終演後、会場近くのトイレから出てきた古舘と偶然出くわした。私が「素晴らしかったです」と率直に感想を伝えると、過剰さとは無縁の奥ゆかしい照れ笑いが返ってきた。 (専門委員)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)編集局文化社会部。放送担当、AKB担当。プロレスと格闘技のファンで、アントニオ猪木信者。ビートルズで音楽に目覚め、オフコースでアコースティックギターにはまった。太宰治、村上春樹からの影響が強い。

[ 2017年5月19日 10:30 ]

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