田口トモロヲ 名脇役の原点はぬいぐるみ“変身”にカタルシス

[ 2017年1月13日 10:00 ]

「バイプレイヤーズ」名脇役6人インタビュー(1)田口トモロヲ(下)

俳優の原点を語る田口トモロヲ(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会
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 遠藤憲一(55)大杉漣(65)寺島進(53)松重豊(53)光石研(55)=アイウエオ順=とともに、日本映画界に不可欠な名脇役6人が夢の共演を果たすテレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」(13日スタート、金曜深夜0・12)に名を連ねる俳優の田口トモロヲ(59)。塚本晋也監督(57)のカルト映画「鉄男」(1989年公開)に主演して注目を浴び、数々の作品を彩ってきた。その原点を聞いた。

 田口は映画監督、ナレーター、ミュージシャンの顔も持つ“マルチ俳優”。メガホンを執ったのは「アイデン&ティティ」(2003年公開)「色即ぜねれいしょん」(09年公開)「ピース オブ ケイク」(15年公開)の3本。NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX」やテレビ朝日の大ヒットドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」のナレーションもおなじみ。84年、パンクバンド「ばちかぶり」を結成し、主宰。09年には、イラストレーターの安斎肇(63)も在籍していたパンクバンド「LASTORDERZ」にボーカルとして加入。ミュージシャンとしても活躍してきた。

 俳優の道に進むきっかけは、東京・夢の島で上演された劇作家・唐十郎(76)主宰の劇団「状況劇場」のテント芝居(1975年「糸姫」)。「高校の終わりか、大学に入っていたかなぁ。こんな別世界があるんだと、非常にショックと感銘を受けました。テントの中で芝居を見るということ自体、本当に別空間。それで、自分もアングラ演劇に関わりたいと。それから寺山修司さんの劇団『天井桟敷』をはじめ、アングラ演劇を見るようになりました」。それ以前、演技の世界に入ることなど、頭になかった。

 当初は「特に役者を希望していたわけじゃなく、スタッフでも、何かしらの形で、と漠然としたビジョンでした」。78年、アングラ劇団「発見の会」に参加。最初は美術の手伝いをしていたが「役者が足りないので、出ろと。その頃はスタッフが役者をしたり、役者が小道具を作ったり、明確な分業がされていなく、みんな役者とスタッフの両方を行き来する関係だったので、その中で自然に流れに乗っかってしまった感じですかね」。同年、「不純異星交遊」で俳優デビューした。

 「デビューが、ぬいぐるみの中身だったんですよ。それがよかったのかもしれません。生身のまま舞台に立っていたら、恥ずかしくて緊張しまくったかもしれませんが、ぬいぐるみを着ることによって、何か違うものになれた、という感覚があったのかもしれません。今、考えると、ですが。外見すらも何か移行できる、変身できるということが、自分にとってはカタルシスだったのかもしれないですね。僕は自己評価が低いタイプなので、他人になれるということがよかったのかもしれません。それは今も変わらず、他者を演じるのは俳優のおもしろさの1つです」

 今後について聞くと「ここまで来れたのも1つ1つの積み重ねだと思いますし、あまり先々のこと、未来のことを考えても、年齢的にはもう未来じゃんっていう。だから、あとは残された時間で何ができる、時間と自分の精神力や体力との格闘しかないと思っています」。現実的な目標としては新作映画を撮るプランがあるが、今回の「バイプレーヤーズ」のように「また出会いが生んでくれる何かがあれば、という思いですね」と結んだ。

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2017年1月13日のニュース