深夜食堂、劇場版最新作も味わい深いぞ!

[ 2016年11月3日 09:20 ]

映画「続・深夜食堂」にマスター役で主演する小林薫

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】酒や食をテーマにした番組が大好き。「吉田類の酒場放浪記」「おんな酒場放浪記」(BS・TBS)、「太田和彦 ふらりいい旅 いい酒いい肴」(BS11)、そして9月で終わってしまったのが残念だが、食随筆家の伊藤章良氏が全国を回り、落語家の立川志らく(53)がナレーションを務めた「ニッポン百年食堂」(BSフジ)も欠かさず見ていた。

 松重豊(53)の食べっぷりにいつもほれぼれするドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京)ももちろん大好物。本紙「超刊スポニチ」に「全国ジャケ食いグルメ図鑑」を連載中の久住昌之氏(58)の原作に谷口ジロー氏(69)が作画を担当した漫画をドラマ化。早く新シリーズが始まらないものかと首を長~くして待っている。

 そして今回のメーンディッシュはコレ、「深夜食堂」である。累計550万部を突破する安倍夜郎氏(53)のコミックを原作に、ドラマ、映画と進化を続け、10月21日からはNetflixでドラマ新シリーズが全世界190カ国に同時配信されている。

 食欲の秋とはよく言ったもので、劇場版の第2弾「続・深夜食堂」がタイミング良く5日に初日を迎える。ドラマ版はもとより、昨年公開された劇場版第1作のメガホンも取った松岡錠司監督(54)が3つのエピソードを巧みに料理し、極上の人情話に仕上げた。

 新宿の裏通りにひっそりとたたずむ「めし屋」に集う人々の悲喜こもごも。それを料理で癒やしていく小林薫(65)の店主が味わい深い演技で魅了する。コアなファンには余計な説明は不要だろうし、初めて見る人のためにも内容は詳しく書かないが、「焼き肉定食」「焼きうどん」「豚汁定食」が物語のキーとなるメニューだ。「焼き肉」に登場する河井青葉(34)と佐藤浩市(55)、「焼きうどん」の池松壮亮(26)、キムラ緑子(55)、小島聖(40)、そして「豚汁」編の渡辺美佐子(84)、井川比佐志(79)と、キャストがみんな素晴らしい。

 とりわけ、そば店の女主人役で登場するキムラの自然な演技はコシもあってお見事。金に困った息子に頼まれて福岡から上京した老母役の渡辺の貫録にも脱帽。レギュラー陣も相変わらずいい味を出しているが、この2人は特筆しておこう。

 50代も半ばを過ぎると、こうしたしみじみした映画にほっこりとする。北海道では「豚汁」を「とんじる」ではなく、「ぶたじる」と呼んでいた。豚肉に大根、こんにゃく、ゴボウ、にんじんを入れて白みそで味付けをする。試写室を出た途端、おふくろの味が恋しくなった。(編集委員)

 ◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。

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2016年11月3日のニュース