【エンジョイベースボールの源流(3)】高校野球という枠の中で戦うだけじゃなく、社会の先導者を育てる

[ 2023年10月25日 08:00 ]

今後の高校野球への思いを語った慶応・森林監督
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 今夏の甲子園で107年ぶりの全国制覇を成し遂げた慶応・森林貴彦監督(50)と慶大野球部OB会・後藤寿彦会長(70)の対談がこのほど行われた。森林監督は同校野球部の代名詞でもある「エンジョイベースボール」の源流を改めて説明。その上で指導者を志した当時から、野球界を取り巻く「勝利至上主義」に疑問を抱いていたと明かした。(構成・伊藤 幸男)

■慶応・森林監督、慶大野球部・後藤OB会長対談(3)■

 「エンジョイベースボール」の意味を説明した森林監督は、今後慶応高ナインがどういう道に進むべきか、その手助けはしていきたいと強調した。具体的な方策が今夏の甲子園期間中、慶応義塾を開学した福沢諭吉氏の生誕の地を訪問したことだった。

 森林 (組み合わせ)抽選会の午前中が空いていたので、福沢先生の生誕の地に行ってきました。皆で写真を撮ったり。あと少し離れたところに適塾と言って、福沢先生が大阪(当時大坂)に行った時に学んでいた塾が残っているんです。そこも見学して、そういう歴史的な…。福沢先生は中津藩だけど、大阪(大坂)で生まれたか分かるみたいな話とか。お父さんが藩の役人で蔵屋敷に勤めていて、蔵屋敷だからこういう川沿いに住んでいただとか、当時お米での物流だからみたいな話をしたり、そういうのも私の役目だと思っているので。

 後藤 そんなところ連れて行く監督はいません。

 森林 緒方洪庵という人がやっていた塾(正式名称・適々斎塾)で、蘭学塾で。そこで福沢先生が…。子供の頃は大して勉強してなかったということだったんですけど、長崎に勉強に行って大阪にたどり着いてそこでしばらく勉強して、そこで優秀だったので、今度は中津藩に引っ張られて、藩の中で塾をやれと、それで始めたのが慶応義塾のその後につながっていくところなんですね。

 後藤 そういう慶応義塾の持つそういった教えは、慶応高校の選手たちに伝わる。

 森林 伝わるでしょうし、自然と伝える機会とかそういう話をする機会は結構多いと思います。一般的な、いわゆる高校野球の監督だけやっているよりも、それは強いかな、と思いますし、慶応義塾というのは、こういうことを目的にして社会の先導者を育てるっていうのが目的なんだよと。だから、僕らも高校野球という枠の中で戦うだけじゃなくて、ここの中の先導者みたいなことを目指してやるんだよっていうことを…。選手にとってはそんな大きなことを言われても、となるかもしれないですけど、そういう意識は強いと思いますし、特に今年の大村というキャプテンはそういうのを理解して高校野球を変えたいみたいなことを、それは僕が言えばいいことで、君はいいんだよっていうことを、それこそ立派なキャプテンで話が上手だったんで結構メディアにもそういう話を頑張ってしています。=終わり=

 ◇森林 貴彦(もりばやし・たかひこ)1973年(昭48)6月7日生まれ、東京都渋谷区出身の50歳。慶応では遊撃手としてプレーし、慶大に進み母校のコーチを務める。卒業後はNTT入社後、指導者を目指し筑波大大学院に進学し、つくば秀英(茨城)のコーチも務めた。02年慶応幼稚舎の教員となり、慶応のコーチに就任。12年から助監督、15年8月に監督就任。春夏4度目の甲子園出場。高3の長男、小6の次男の2児の父。

 ◇後藤 寿彦(ごとう・としひこ)1953年(昭28)5月14日生まれ、岐阜県出身の70歳。慶大在学時の75年春、東京六大学リーグで三冠王を獲得。社会人の三菱重工三原で活躍後、94年から母校監督に就任した。01年春まで指揮を執り、リーグ優勝3度、00年には明治神宮野球大会制覇。教え子には高橋由伸氏(元巨人監督)ら。現在は朝日大学野球部総監督。

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