“魂を投げている感じ”ソフトB戦力外の奥村政稔 今後は未定も コメントに感じた潔さと気概

[ 2023年10月6日 13:30 ]

ソフトバンク・奥村政稔
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 だいぶ寒くなってきたなと思っていたら、球界の寂しい時期も到来してしまった。戦力外通告だ。10月5日、かなりの年下だが「あにき」と勝手に呼んでいた奥村政稔投手(31)らが、来季契約を結ばないと球団から通達を受けた。18年ドラフト7位で入団も、昨秋に右肘を手術。今季は背番号「126」の育成選手だった。

 「まあ、しゃあないですよね。こっからの人生の方が長いんで、今まで以上に頑張っていきますわ」

 相変わらずの潔さだった。九州国際大を中退後に三菱重工長崎で投げていた。マウンド上での面構えが良かったので、取材した時から覚えていた。チームが統合した三菱日立パワーシステムズでは17年の都市対抗本戦で4強入りに貢献。その際も取材した。思い切り腕を振った後に捕手のミットすら見ないので「どこを見て投げてんですか?」と聞くと「魂を投げている感じですかね」と言っていた。爆笑させられた。

 数年後。ソフトバンク担当となり、奥村と再会したがプラスの意味で変わっていなかった。工藤ホークスでは中継ぎで活躍。ミットを見ずに気迫で押すが制球力も武器だった。22年の藤本体制では先発に抜てきされ、2試合を投げた。好投したが、念願のプロ初白星は取れなかった。

 22年8月29日ロッテ戦。5回4安打1失点も後続の救援陣が打たれた。抜群の肝っ玉とゲームメークには藤本監督もうなっていた。2度目は同9月13日の西武戦。ペイペイドームの観客席には地元大分県から大勢の「チーム奥村」を呼んでいた。3回零封で、自主トレをともにする師匠・森唯斗につないだ。自身に白星はつかなかったが、チームは勝利。お立ち台で森と、はじけまくっていた。

 その際。勝利の美酒に酔っているどころじゃないはしゃぎっぷりだった。「え? まじでマッコリかなんか、(お酒を)飲んでお立ち台行ったんじゃないんですか?」といじると「(そん)なわけないやん!」。豪快に爆笑していた。うわべだけではない、薄っぺらくない人間性が、たまらなかった。

 今季、育成選手になっても奥村は筑後ファーム施設で「お! 元気すか?」と必ず寄って来てくれた。大分県の中津市出身。夏までに再び支配下登録されてプロ1勝目を上げた際には、地元名産の「中津唐揚げ」をテイクアウトして渡すつもりだった。

 球団との来季の契約締結は、なくなってしまった。清々しさをキープしつつも、今後の道は迷っているという。奥村は言った。「まあ、またっすね」。この気概が、ずっと気持ちいい。また再会した時に揚げたての中津唐揚げを渡す。まあ、そう決めた。(記者コラム・井上 満夫)

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