MLBの常識覆した大谷の価値 オフにFA引き留め失敗ならさらに遠のくチーム再建

[ 2023年7月29日 02:30 ]

ア・リーグ   エンゼルス6―0タイガース、エンゼルス11―4タイガース ( 2023年7月27日    デトロイト )

<タイガース・エンゼルス>4回、大谷は2打席連続となる2ランを放ちナインの出迎えを受ける(撮影・沢田 明徳) 
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 【記者の目】低迷する球団を再建するには、FAになるスター選手を放出し、若手有望株を獲得する。これがMLBの常識である。過去にはランディ・ジョンソンも、マーク・マグワイアも、マニー・ラミレスも7月に移籍した。日本選手ではイチロー、ダルビッシュも経験している。しかし、エンゼルスは大谷をトレードしない決断を下した。これまでの常識を覆すだけの「価値」が大谷にはあるからだ。

 昨季、ヤンキースのジャッジが61年ぶりに塗り替えた62本塁打のア・リーグ記録の更新が懸かる。残り2カ月、仮にPO争いから後退しても、エンゼルスタジアムは異様な熱気に包まれるだろう。この日もダブルヘッダーで完封勝利、もう1試合で本塁打(2発)という史上初の偉業を達成。大谷の試合は「歴史の目撃者」になれる。その価値はどんな有望な交換相手にも代えられるものではない。

 ただ、今回の残留劇を「大きなギャンブル」と否定的にとらえる米メディアは多い。最後までトレードのゴーサインを出さなかったアート・モレノ・オーナーは勝つための投資よりも、集客やビジネス面を重視した補強で失敗を繰り返してきた。最近ではレンドンがいい例で、成績に見合わない大型契約がチーム総年俸を圧迫。戦力バランスを欠き、それが長年低迷の理由にもなっている。今回も大谷の残留を決めると、すぐにホワイトソックスとのトレードで先発のジオリトと中継ぎのロペスを補強。事実上、2カ月間のレンタルにもかかわらず、球団の有望株ランキング2位と3位の選手を差し出してしまった。

 一度発表した球団売却を今年1月、「まだやり残したことがある」と突然撤回したモレノ・オーナー。大谷との再契約のためにドジャースなどの金満球団に対抗できるオファーを出してくるだろう。しかし、引き留めに失敗した場合、残るのは代わりに得られる3巡目相当のドラフト指名権だけで、再建はさらに遠のく。エ軍にとって、本当のハッピーエンドはまだ先にある。(甘利 陽一)

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