阪神・岡田監督の“神”眼 1ストライク後に代打のワケ 二手三手先まで読む采配も「普通のことやろ」

[ 2023年4月3日 05:15 ]

セ・リーグ   阪神6-2DeNA ( 2023年4月2日    京セラD )

選手交代を告げる岡田監督(撮影・大森 寛明)
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 阪神・岡田彰布監督(65)がさえわたる采配で猛虎を2年ぶりの開幕3連勝へと導いた。2日のDeNA戦は8回2死一塁からの二盗で好機を整え、1ストライクの打席途中で代打投入した原口文仁内野手(31)が“初球”をチーム1号の本塁打。4点差へ突き放し、湯浅京己投手(23)の3連投回避を事前に決めていた一戦を悠々と逃げ切った。

 いったい何手先まで見えているのか。8回2死。岡田監督は四球で出た中野に二盗を指示した。1ストライクから3球続いたエスコバーのけん制に誘い出されても、猛然と二塁を奪った。2死二塁。好機が広がり、間髪入れず動いた。

 「セカンドに行ったら、いくって言うてたんよね」

 代打・原口を送った直後の2球目。左越え2ランが生まれた。同じエスコバーに前日は8回1死二、三塁で三邪飛。“初球”の154キロを捉えて雪辱し「1ストライクからは関係なく、初球からいかないといけない打席。(ベンチ)裏で準備しながら待っていた」と胸を張った。

 神がかり的な采配的中は、鋭い戦術眼を抜きに語れない。2死一塁の時点で右の代打の切り札・原口を出さなかったのは、なぜか。左打者の島田は捕手の一塁側への視線をさえぎるため二盗の助けになり、かつ左腕エスコバーにくみしやすしと思わせるためだ。「キャッチャーも二塁へ投げづらいやろ。このバッターを抑えられる…とピッチャー心理なら思うんちゃう?」。島田は7回から左翼ノイジーに代えた守備固めでもあり、もしも二盗失敗なら9回の守備に残せる。攻めながらリスク管理も忘れず、2死二塁を待った。

 「2ストライクでも代えていたよ。エスコバーのストレートを打つのは原口しかいない。昨日の件があるから、いいお返しができる場面になった」

 大前提は連投で計55球を投げていた湯浅の温存。3連投回避は試合前から決めていた。2点を加えて突き放し、9回は代役の石井に4点リードの余裕を持たせて逃げ切った。

 「(采配が)当たったと言っても、俺にしたら、普通のことやろ。こんなの。点を取りにいくんやからさ。コーチかて、みんな、凄いって言うけど、いや、凄くない、普通やろって。盗塁のサイン出したときから、原口を用意しとけ、言うたよ。それがどういう意味か分かってなかったコーチもいたかも分からんけどな」

 オリックス監督だった12年を最後に遠ざかっていた最前線での指揮。春季キャンプ中の練習試合では「昔はどうしとったかな」と首をひねったことも。監督室に置いたさまざまなサイン表を頭に叩き込み、日々パズルゲームのような起用シミュレーションで勘を取り戻した。理詰めの指し手こそ真骨頂だ。 (倉世古 洋平)

【データ】
 ○…阪神の開幕3連勝は21年の3連勝以来2年ぶり。岡田監督は前回阪神監督時代に04年3連勝と08年5連勝の2度、開幕3連勝に成功しており、通算6シーズンで3度目。前回08年は開幕の横浜3連戦(京セラドーム)の後、ビジターで広島3連戦(広島)と、今回と同じマッチアップ。6戦目の広島3回戦で逆転でシーズン初黒星を喫し、開幕2カード連続3タテを逃している。
 ○…原口(神)の代打本塁打は20年10月22日、広島戦(甲子園)の7回以来3年ぶり4本目。チーム1号が代打本塁打は、阪神では12年以来11年ぶり。3月30日DeNAとの開幕戦(京セラドーム)で1―3の7回2死一、二塁から関本が能見の代打で登場し、左越えに逆転3ランを打った。
 ○…原口は島田の打席途中、0ボール1ストライクから代打出場。阪神で同様のケースは70年7月29日のヤクルト戦(甲子園)0―0の延長13回1死満塁。鎌田実が初球のスクイズをファウルで失敗。0ボール1ストライクから代打で起用の池田純一が、右越えにサヨナラ本塁打したことがある。

 ▼阪神・中野(8回の二盗は)初球にスタートを切れなかったんですけど、2球けん制球が来て、3球目はないかなと。結果、けん制球が来たけど、そこで思い切って二塁に行けたので良かった。

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2023年4月3日のニュース