【プロ野球・球宴名場面(1)】昭和の剛腕伝説 江夏豊の9者連続三振 “完全な二刀流”MVP

[ 2022年7月25日 17:00 ]

1971年オールスターで偉業を成し遂げた阪神・江夏豊
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 2リーグ分立翌年の1951年にセ・リーグとパ・リーグの対抗方式で産声を上げ、今年で72回目を数えるプロ野球「マイナビオールスターゲーム2022」が7月26日(福岡PayPayドーム)27日(松山・坊ちゃんスタジアム)に開催される。昭和から平成、令和…巨星たちが数多の名勝負を繰り広げてきた真夏の球宴。野球ファンの記憶に刻まれた名場面ベスト10(スポニチ選定)を紹介する。(所属、球団名、登録名、球場名は当時)

 ■1971年第1戦=7月17日

 まさに伝説。球宴史上最高のパフォーマンスといわれるのは阪神・江夏豊の衝撃の9者連続奪三振だ。この年の江夏はプロ5年目の23歳。4年目までに最多勝、防御率のタイトルと沢村賞を獲得。4年連続最多奪三振も記録している。前年には球宴MVPも獲得し、球界を代表する左腕エースとして君臨していた。

 この年は6勝9敗と大不振。成績からは球宴出場が危ぶまれていた。だが3年ぶりにファン投票1位で5年連続の大舞台を踏むこととなった。選出の際には「ファンの皆さんに感謝したい。たとえホームランを打たれても三振を多く取るピッチングをしたい」と奪三振ショーを予告していた。

 第1戦、舞台は“地元関西”の西宮球場。

 有藤通世(ロッテ)、基満男(西鉄)、長池徳二(阪急)を3連続空振り三振。2回も江藤慎一(ロッテ)と土井正博(近鉄)を空振り三振。東田正義(西鉄)は見逃し三振に斬った。

 3回は少し苦しんだ。小兵の阪本敏三(阪急)を見逃し三振。岡村浩二(阪急)を空振り三振。あと1人。「よしやってやる」。江夏が燃えた。加藤秀司(阪急)カウント1―1からバックネット方向へファウルフライを打ち上げた。「追うな!」と江夏。最後は直球で空振り三振。偉業を達成した。

 捕手の田淵幸一は後にスポニチ本紙・我が道で「『追うな』と言われ、もちろん捕るつもりはなかった。私は思わず記念のボールをマウンドに転がしてしまった。一塁を守っていた王貞治さんが拾って江夏に渡してくれたが、それほど興奮していた」と当時の心境を語っている。

 全パ打線は、4回以降も沈黙してノーヒットのまま敗戦。江夏は2回に田淵のバットを借りて3ランも放ち“パーフェクトな二刀流”ショーでMVPを手にした。

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