【プロ野球・球宴名場面(4)】江川怒とうの8奪三振 江夏超え「10」をにらみ投じたカーブ

[ 2022年7月25日 17:15 ]

1984年7月24日、自身初のMVPを受賞した江川。3イニングを8連続奪三振を含む無安打無失点の快投だった
Photo By スポニチ

 2リーグ分立翌年の1951年にセ・リーグとパ・リーグの対抗方式で産声を上げ、今年で72回目を数えるプロ野球「マイナビオールスターゲーム2022」が7月26日(福岡PayPayドーム)27日(松山・坊ちゃんスタジアム)に開催される。昭和から平成、令和…巨星たちが数多の名勝負を繰り広げてきた真夏の球宴。野球ファンの記憶に刻まれた名場面ベスト10(スポニチ選定)を紹介する。(所属、球団名、登録名、球場名は当時)

 ■1984年第3戦=7月24日

 あの不滅の記録まであと1つ…。巨人のエース江川卓は郭源治(中日)の後を受けて4回からマウンドに上がった。初めてファン投票で選出された2年前の球宴では右肩痛を発症。夏の宴でいい思い出はない。この年の公式戦は前半戦8勝2敗ながら防御率3・91はセ14位。球宴前最終登板でも3回KOを食らっている。

 後半戦巻き返しのきっかけを求めての登板だった。先頭の福本豊を直球で見逃し三振。続く簑田浩二はカーブで見逃し。ブーマーは直球で空振り三振だ。阪急トリオを軽く料理して乗った。5回は栗橋茂(近鉄)をカーブ、落合博満(ロッテ)は直球。石毛宏典(西武)はカーブで空振り三振。6回は伊東勤(西武)をカーブで空振り。トミー・クルーズ(日本ハム)は148キロ直球で空振り三振だ。

 最強左腕・江夏豊の9者連続三振まであと1。大石大二郎(近鉄)を迎え、江川は球宴前に会食した漫画家・水島新司氏との会話を思い出していた。後年ラジオ番組で当時を振り返り「振り逃げって三振に入るんじゃなかったっけって話になったんですよ。振り逃げで三振取って、次の打者で10個三振取れるねって話になった」。

 9人目の打者・大石を0―2と追い込んで選択したのがカーブ。低めに落として空振りを取り、それを捕手の中尾孝義(中日)が逸らせば“振り逃げ成立”9個目の三振を取って10人目に“新記録を”というプランだった。

 だがカーブが高めに浮き二塁ゴロを打たれてしまった。「最後はギリギリのボールを投げるつもりがストライクになっちゃった。まあいい思い出ができました」。これが昭和の怪物の生涯最初で最後の球宴MVPとなった。

続きを表示

この記事のフォト

2022年7月25日のニュース