【プロ野球・球宴名場面(6)】怪物ルーキー野茂を打ち砕いた3冠王・落合の貫禄

[ 2022年7月25日 17:25 ]

1990年7月25日、2回2死一塁、野茂から逆転2ランを放った落合
Photo By スポニチ

 2リーグ分立翌年の1951年にセ・リーグとパ・リーグの対抗方式で産声を上げ、今年で72回目を数えるプロ野球「マイナビオールスターゲーム2022」が7月26日(福岡PayPayドーム)27日(松山・坊ちゃんスタジアム)に開催される。昭和から平成、令和…巨星たちが数多の名勝負を繰り広げてきた真夏の球宴。野球ファンの記憶に刻まれた名場面ベスト10(スポニチ選定)を紹介する。(所属、球団名、登録名、球場名は当時)

 ■1990年第2戦=7月25日

 福岡・平和台球場がスター対決に熱狂した。全パ2回の攻撃。マウンドに与田剛(中日)がいた。150キロ超の速球で24セーブを重ねてきたドラフト1位ルーキー。清原和博(西武)は静かに打席に入った。カウント3―0から強振。打球は左中間場外へ消えた。

 セの新人王本命である与田がプロの洗礼を浴びてから数十分後、パの怪物ルーキーが衝撃の1発を食らった。

 野茂英雄。

 8球団競合のドラフトで近鉄入り。デビューから16試合で10勝5敗、防御率2・87。勝ち星、勝率は渡辺久信(西武)に次いでパ2位。163奪三振は1位。“トルネード旋風”でプロ野球界を席巻していた。

 打席に入る前、全セの4番・落合博満は中日の後輩・与田にこうささやいていた。「お前のMVPはなくなったけど、野茂にもやれないな」。3回2死二塁。野茂の直球を叩くと打球は左翼スタンドに弾んだ。

 怪物新人を叩いた3冠王の一撃には伏線があった。

 球宴前、野茂の印象を問われると「フォークボールばかり投げるオジンくさい投手」とけん制した。前日の第1戦の9回にも対決。野茂は6球連続直球を投げた。最後は「フォアボールがイヤだったから」と落合がボール気味の直球を打って右飛。この日の第1打席では遊飛。3度目の勝負。野茂はフォークを混ぜながらカウント3―1。追い詰められた野茂が直球勝負に切り替えたところを落合が仕留めた。後のメジャーリーガーはぼう然と立ち尽くし、打球の行方を追った。この試合のMVPは2発の清原だったが、主役は間違いなく落合だった。

続きを表示

この記事のフォト

2022年7月25日のニュース