【内田雅也の追球】「2死後本塁打」と好守備 開幕の悪夢ぬぐい去る勝利 阪神浮上への土台は整ってきた

[ 2022年5月19日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神8-1ヤクルト ( 2022年5月18日    神宮 )

<ヤ・神>4回、山崎の打球を軽快にさばく中野(撮影・村上 大輔)
Photo By スポニチ

 逆転サヨナラ負けを喫した前夜の悪夢をぬぐい去る快勝である。阪神が高橋奎二に浴びせた3発で評価したいのは、いずれも2死から放った点である。相手にとっては「あと1人」での一発は実に効果的だった。

 1回表2死無走者でジェフリー・マルテが今季1号、2回表2死一塁で投手の西純矢がプロ初アーチ、3回表2死一、三塁で大山悠輔が放った。

 西純に2死で打席が回ったのは、むろん打撃にも期待して8番に起用した監督・矢野燿大はじめベンチの用兵が当たったわけである。

 大リーグでは「2死後打点」は勝負強さの目安として特記される。その統計もある。プロ野球での統計は手もとにはないが、恐らく阪神は相当に少ないはずだ。「あと1本」が出ないと苦しんできた打線にあって、適時打ではないが「2死後本塁打」も特筆したい。

 もう一つ、この3発が光るのは「つながり」である。マルテはファウルの後、西純は一振りで高橋の速球を振り負けずにとらえた。前の2発を見ていた大山は初球、変化球も頭にあったろう。高めチェンジアップを運んだ。本塁打は個人のものだが、前後で打線としてつながっていたわけだ。

 佐藤輝明の本塁打も含め、派手な4発に隠れてはいるが、阪神にはいくつも好守備があった。書いておきたいのは遊撃手・中野拓夢である。1回裏、4回裏の俊足・山崎晃大朗の左右へのゴロをさばいた。投球の球種・コース、さらに打者の反応から打球方向を予測できている。9回裏、村上宗隆のゴロも、事前のシフトが効いていた。

 5回裏1死一、三塁のピンチをしのいだ5―4―3併殺も強烈なゴロに三塁手・佐藤輝明が体を張っての捕球があった。

 敗れた前夜もいくつも好守があった。打線はやはり水物で、勝ち続けるには守備面の安定が欠かせない。リーグ最高守備率、最少失策の守備陣は強みになる。3失点以下の連続試合を20まで伸ばしたのは投手を含めた守備にある。打線も復調気配でチーム浮上への土台は整ってきたと言える。

 最後に最終スコアの8―1に開幕戦を思う。あの3月25日、このヤクルト相手に8―1から逆転で敗れ、9連敗した。開幕の悪夢をもぬぐい去る勝利だったと付け足しておきたい。=敬称略=(編集委員)

続きを表示

2022年5月19日のニュース