「勝者のメンタリティー」とは 阪神は常勝軍団になれるか

[ 2021年10月10日 08:00 ]

<ヤ・神22> 勝利のタッチをかわすスアレス(右から3人目)ら阪神ナイン(撮影・大森 寛明)
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 阪神とヤクルトのし烈な優勝争いが山場を迎えている。毎試合、ワンプレーに息を飲みながら見守る感覚は、個人的には中日担当だった11年以来だ。

 当時の中日は強かった。11年も夏場に最大10ゲーム差を付けられたヤクルトを大逆転して球団史上初のリーグ連覇を達成。担当記者の間でも、秋に入って猛追を開始した時点で「今年も優勝するんだろうな」という雰囲気があった。

 数字では計れない。チーム打率は・228、419得点はいずれもリーグワースト。ただ、落合監督最終年のチームには「勝者のメンタリティー」が浸透していたように思う。夏場以降は、接戦で試合終盤に入るとお決まりのように1点勝ち越して逃げ切った。中日の戦い方は変わらないのに、相手チームがまるで魔法にかけられたかのように四球を出す、ミスを犯す。「常勝軍団」の威圧感で勝利をつかんでいた。

 就任8年間で4度優勝した落合監督が退任時にこう話していた。「4度優勝したけど、4度逃した。優勝の喜びを知っているからこそ悔しさもわかる。悔しさを知っているから喜びも倍増する」。今季中日に復帰した福留も、阪神時代に「若手には優勝を味わってほしい。そこで変わる部分は必ずあるから」と強調していた。同じく中日、阪神に在籍し、“お決まり”の勝ちパターンの一員だった高橋聡文氏は「相手が焦っているなと見えた試合は楽だった。優勝してから、そういうのが見えてくるようになった」と話している。

 どのチーム、選手も優勝を目標に掲げるが、経験しているからこそ明確なイメージを描ける。その喜びがいかほどかを知るだけに、絶対に譲れない気持ちも生まれる。頂点に立った自信だけでなく、より強烈なモチベーションも得られるということだろう。

 今担当している阪神には優勝を知る選手はほぼいない。ヤクルトについにマジックが点灯し、厳しい局面を迎えている。ただ、近本、大山、佐藤輝ら伸び盛りの若手が中心だけに、もし優勝を経験できれば、来年はどれだけ強くなるのか。選手会長の近本が春季キャンプの打ち上げで宣言した「黄金期」の到来も、決して夢物語ではない。(記者コラム・山添 晴治)

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2021年10月10日のニュース