ヤクルト・山田、セオリーの逆を突く「右手」生還 左手おとりに捕手の意識誘いタッチかいくぐった

[ 2021年10月9日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト4―1阪神 ( 2021年10月8日    神宮 )

<ヤ・神>初回、村上の二塁打で一走・山田(左)が生還(捕手・梅野)(撮影・大森 寛明)
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 【追球ズーム ここにFOCUS】ヤクルトが優勝マジック「11」を初点灯させた一戦でキラリと光ったのが、初回の山田哲人内野手(29)の走塁だった。27イニング連続無失点だった阪神・高橋遥人投手(25)から先制点をもぎ取った本塁へのスライディング技術に、現在の強さが垣間見えた。

 本塁方向に向けていた左手を、山田は手前で地面につけて急ブレーキをかける。相手の意識を左手に誘い、背中側から回した右手でミットをかわしベースを触った。「あれは大きかった。タッチをかいくぐったというか、うまく手を入れた」と高津監督も称賛した。

 山田の「神の手」スライディング。これが試合の流れを決めた。場面は初回2死一塁。村上の右中間への打球で、一塁から本塁を狙った。セオリーなら左手だが、これは「おとり」だった。阪神側のリクエストも判定は覆らず。6連勝中のチームは勢いづいた。

 「タイミングは微妙なところだった。よく走った」。指揮官は目を細めた。シンプルに足から滑り込んでいれば、捕手・梅野のミットとの「競争」が待ち受けていた。山田は瞬時の判断で足をやめ、手に切り替えた。

 19年の春季キャンプでは、本塁ベースに大小2つの紙コップを置き、捕手のタッチをかわしながらコップをつかむ練習を繰り返した。今年の2軍キャンプでも取り入れた。指揮官が日頃から繰り返す「1点を取る意識」。その意識改革として、ユニークな走塁練習で選手の技術を養った。

 山田は前日の巨人戦でも9回2死二塁から遊撃へのボテボテのゴロで一塁まで全力で駆け抜け、サヨナラ勝ちを呼び込んでいる。走塁への意識は外国人選手にも浸透。この日は4回無死一塁で二ゴロのオスナが走塁を怠らず、併殺打を免れた。

 優勝が近づき、ヤクルトの戦いぶりは注目されている。毎試合後といっていいほど、ネット上では一つのキーワードが上昇する。それが「全力疾走」だ。最後まで諦めずに走る姿は相手にも重圧をかける。高津ヤクルトの躍進理由は、細部にも宿る。(川手 達矢)

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2021年10月9日のニュース