離脱の大山、悔しいだろうなあ。でも絶対に焦りは禁物。阪神を先頭で引っ張るために

[ 2021年5月8日 08:00 ]

鳴尾浜で阪神・平田2軍監督(右)と話す大山(代表撮影)
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 【畑野理之の理論】つらいよなあ。悔しいだろうなあ。鳴尾浜で背中の張りのリハビリを開始した大山悠輔の心境をおもんぱかった。「4番・三塁」の佐藤輝明が特大アーチ。代わりにスタメン出場した糸井嘉男も本塁打を放った。テレビで見ていただろうか。見ていたとして、どんな思いが去来しただろう。1日でも早く戻りたいと思ったはずだが、絶対に焦ってほしくない。

 負傷による理由での降格は5年目で初めて。監督の矢野燿大が「そんなに大きな離脱になるとは思っていない。もっと悪くならないための抹消」と説明したように、今回も大山の意思ではなさそう。凡打でも一塁へ全力疾走するスタイルなのだから、首脳陣が半強制的に大事を取らせたのだと判断する。

 2日の広島戦を欠場。その時は積極的な休養と発表されたが、5日のヤクルト戦で4回の守備から途中交代し、6日に出場選手登録を外れていた。コンディションはずっと良くなく、パンク寸前だったと推測する。

 思い出したくない記憶がある。03年、開幕から4番に座っていた25歳シーズンの浜中治が5月20日の広島戦でけん制球で帰塁した際に右肩を負傷。6月13日の巨人戦で送球したときに右肩を脱臼して離脱した。日本シリーズで代打で復帰したものの、18年ぶりリーグ優勝の歓喜の輪に加われなかった無念さを知っているし、見てきた。胴上げ翌日の9月16日付紙面でスポニチに独占手記を寄せ「俺なにしてんねん…て。つらかったし、悔しかったし、テレビで試合も見られなかった」と明かしていた。

 負傷理由もチーム事情も異なるので2人を重ねてはいけないが、大山には優勝するチームの先頭に立っていてほしい。元日付紙面で金本知憲(本紙評論家)と「4番道」対談、春季キャンプでも広澤克実(同)との本塁打論でスポニチ紙面に登場。いずれでも「チームの勝利のための1本」にこだわる姿勢が印象的で、好感がもてた。今年からキャプテンも務め、言葉の端々から責任感の強さも伝わる。

 2日の広島戦で、井上一樹ヘッドコーチに「佐藤輝に三塁も4番も奪われました」と話したらしいが、半分は本音かもしれない。プロの世界だから休むことが恐いのも仕方がない。それでも今回ばかりは首脳陣からの少し休め――に甘えてほしい。そして、しっかり治せ――のメッセージに応えてほしい。万全になってチームの中心に戻ってきて…と願う。=敬称略=(専門委員)

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2021年5月8日のニュース