現役ドラフト導入へ、覚悟を持って踏み出せるかどうか

[ 2019年11月29日 08:30 ]

事務折衝に出席した日本プロ野球選手会の炭谷銀仁朗会長(右)と森忠仁事務局長
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 「現役ドラフト(仮称・ブレークスルードラフト)」の来季からの導入を目指し、日本野球機構(NPB)と労組・日本プロ野球選手会の間で話し合いが行われている。11月20日に行われた事務折衝では、炭谷銀仁朗選手会長(巨人)が「その一年で人生が変わる選手もいる。早いに越したことはない」と訴えた。

 NPB側も導入には前向きだが、ドラフトの対象となる選手の範囲などで意見が分かれているという。確かに、難しい。1年間で1軍に出場する選手数は50~60人にのぼる。1軍で出場機会のなかった選手は、支配下登録(70人)の残り10人程度で、あとは育成契約選手しかいない。当面は「各球団何人」と決め、各球団からリストを提出してもらってスタートを切るしかないだろう。だが、その人数が少なすぎれば意味がない。

 さらに、各球団がリスト提出後から現役ドラフト当日までの間に、そのポジションの1軍選手が複数故障離脱した場合、リストの入れ替えはできるのだろうか――など問題点は出てくる。さらにその「リスト」は、FAの人的補償のプロテクト同様、公表はできない。球団と選手の信頼関係に影響する。

 巨人のV9期間中である1970年から戦力均衡を図る目的で「ルール5ドラフト」に似た「選抜会議」が行われたが、リストアップされた選手が少なく、72年を最後に自然消滅した。90年代には「セレクション会議」が行われたが、いずれも戦力均衡や球界の活性化にはつながらなかった。

 炭谷選手会長は「まず始めること」が大事であると力説する。どんな形でスタートしても、様々な意見や批判が出る。その覚悟を持って第1歩を踏み出せるのか。選手関係委員会の谷本修委員長(阪神球団本部長)は来季からの導入するためには「本来は12月で方向性がまとまっていないとしんどい。遅くとも1月だが、ぎりぎり」と話している。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2019年11月29日のニュース