マー 敗退危機ヤ軍救った「こっちに来てから一番大きな勝利」

[ 2017年10月10日 05:30 ]

ア・リーグ地区シリーズ第3戦   ヤンキース1―0インディアンス ( 2017年10月8日    ニューヨーク )

<ヤンキース・インディアンス>7回を3安打無失点でプレーオフ初勝利を挙げた田中
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 この舞台で勝つために、海を渡った――。ヤンキースの田中将大投手(28)が8日(日本時間9日)、インディアンスとの地区シリーズ第3戦で7回を3安打無失点、7奪三振。負ければ敗退が決まる一戦で、1―0の勝利につなげた。ポストシーズンは15年のワイルドカードゲーム以来2度目の登板で、日本投手として松坂大輔、黒田博樹に続く先発白星となった。

 重圧を力に変えた。初めてピンチを招いた4回1死三塁。田中がギアを入れた。「何とか三振を取りたい」。ア・リーグMVP候補の3番ラミレスの4球目にこの日最速96マイル(約154キロ)を記録し、6球目の91マイル(約146キロ)スプリットで空振り三振。4番ブルースも連続三振に斬ると雄叫びを上げ、感情を爆発させた。

 「ここで勝つことで、また流れを変えられる」。今季は好不調の波が激しく13勝12敗、防御率4・74。ワイルドカードゲームから数えて「4番手」に回ったエースが、負ければ敗退というチームの崖っ縁で奮い立った。

 試合後の会見では米メディアから「ビッグゲームで勝てる理由は?」と聞かれ、はにかんで言った。「そういう状況が、日本語的には“おいしい”っていうか。おいしい場面だと思っている。ネガティブな感情というよりはポジティブに(考えた)」。前向きに臨み最高の結果で応えた。

 魂の7回92球にジョー・ジラルディ監督は「これ以上ない投球」と称えた。直後にはバードのソロが飛び出した。ベンチ裏のテレビで見ていた田中は「よしっ!」とガッツポーズを繰り出した。

 ヤ軍のポストシーズン1―0勝利は、連敗スタートとなった01年の地区シリーズ第3戦以来16年ぶりだ。アスレチックス戦で右翼から一塁ベンチ側にそれた本塁返球を、ジーターが遊撃から驚異のバックアップ。伝説のバックトス「ザ・フリップ」で本塁生還を阻止し、そこからワールドシリーズまで進出した。田中の快投が奇跡の再現を予感させる。

 有言実行でもあった。3日のツインズとのワイルドカードゲームで先発し、わずか1/3回でKOされたセベリーノは、田中から「やり返すチャンスがくる」と声を掛けられたという。弟分の23歳右腕が、第4戦に雪辱する機会もお膳立てした。

 日本投手としてはポストシーズンで通算10勝目。「こういうゲームで投げて勝つために、ここに来た。こっちに来てから一番大きな勝利じゃないかな」。エースとしての誇りをにじませた一方で、「自分自身を褒めたいとは思うけど、まだ1試合」と先も見据えた。8年ぶりの世界一に向け、次の出番を信じて待つ。(ニューヨーク・大林 幹雄)

 ≪00年クレメンス以来≫ヤ軍先発投手のポストシーズンでの無失点は7年ぶり。「7回以上無失点&7奪三振以上」となると、00年メッツとのワールドシリーズ第2戦のクレメンス(8回、9三振)以来。田中のポストシーズン登板は15年アストロズとのワイルドカードゲームがあるが、5回2失点で敗戦投手だった。

 ≪逆転突破は3例だけ≫5回戦制の地区シリーズで敵地連敗スタートは昨季まで計32チーム。うち本拠で第3戦勝利は12チームで、中でも3連勝で逆転突破は03年のレッドソックスなど3例だけ。

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