重要なのは「どう終えるか」…ヤンキース田中と同期入団選手、それぞれの秋

[ 2017年10月10日 13:00 ]

4月12日の楽天戦の5回、バットを折りながら内野安打を放つ西武・渡辺直
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 メジャーリーグ取材で、よくこんなコメントを聞いた。「いまどうこうではなく、どうシーズンを終えるかが大事なんだ」。ポストシーズンは地区シリーズの熱戦が展開中。まさにどんな形で今季を終えるかの最終章にさしかかっている。

 ア・リーグ地区シリーズはヤンキースがインディアンスに連敗し崖っぷちだった。第3戦で田中が7回3安打無失点の最高の投球でチームを救った。「こういうゲームで投げて勝つために、ここに来た」。防御率4・74と安定感を欠いたレギュラーシーズンでは、ニューヨークメディアから散々、批判を浴びたが手のひら返しの大絶賛。シーズンで好成績でもポストシーズンで活躍しなければ、その逆になる。まさに「どうシーズンを終えるかが大事」。ヤ軍は第4戦も勝利して2勝2敗のタイに持ち込み、シリーズ突破へ望みをつないだ。

 勝ち残ったチームが熱戦でクライマックスを迎える一方で、厳しい現実を突きつけられるのも野球界の秋の常。チームの全日程終了前後に引退、退団、戦力外選手が次々に発表されている。最近、多くなっているのが「退団」発表のケース。今オフは広島・梵、日本ハム・武田がその例だ。チーム来季編成の構想から外れ、現役続行を目指すベテラン選手に対しての対応のひとつ。一般的には事実上の「戦力外」だが、引退を選択すればシーズン最終戦に引退試合を行うべき「功労者」に最大限の敬意を払って球団が事前に話し合いを持つ。その上で現役続行を望んだ場合がこの「退団」という発表になる。さらに球団が必要だと思えばコーチなどのポストの提示もあるケースだ。DeNAの高田繁GMが「彼は自由契約にした方がチャンスがある」と「戦力外」通告を受けたDeNA久保も、そのケースには近い。

 残念ながらそうではないケースもある。「あれ、どうなんですか?あまりにも冷たくないですか」。他球団のある選手がそう首をひねったのは西武の渡辺直への戦力外通告だった。楽天、DeNA、西武と3球団で12年プレーし1046試合に出場。打率・261で832安打も、181犠打、115盗塁、現役5位の96死球で出塁率・344とつなぎ役としての数字は高い。1096試合出場で990安打で打率・264、135盗塁、145犠打で出塁率・331の広島・梵と同タイプの貢献度といえる。

 「彼のことは直接知らないけど、出ればしぶとい働きをするし、若手にもいい影響を与える選手だって聞いている。そういう選手に対しての対応としてはちょっとないんじゃないかな」。違う球団のベテラン選手の言葉だ。成績だけではない存在感は、球界でも知られている選手の1人。球団から事前の話し合いもなく、またポストも用意されずに他の若手同様「戦力外」と告げられただけだという。「どう現役を終えるか」は選手にとっては大きな意味がある。

 同じくオフの注目となるFA権行使。制度発足以来、FA流出が最も多いのはくしくも西武の15選手だ。流出が2桁に到達しているのは他に日本ハムの13人とオリックスの10人。すべての理由ではないだろうが、球団の選手への対応もFA流出の要因の1つではないだろうかと感じる事象の1つだった。

 思えばヤンキース・田中と渡辺直は、06年ドラフトでの楽天の同期入団選手。それぞれの重要な秋を「どう終えるか」に思いを巡らせている。(記者コラム・春川 英樹)

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