球界に広がる支援活動 選手がプレー以外で被災地のためにできる“何か”とは

[ 2016年4月18日 11:52 ]

 自宅にいる時は、NHKをずっと観ている。熊本、大分両県で14日から続発している地震。16日未明、熊本県で震度6強の「本震」が発生した時もテレビで知り、明け方まで観ていた。嫁の親戚が熊本市在住。マンションは免震構造で被害は少なかったそうだが、営んでいる洋菓子店はダメージを受けた。床には食器が散乱し、先の見えない恐怖に直面している。

 11年3月11日に起きた東日本大震災。当時、横浜(現DeNA)―ヤクルトのオープン戦の取材で、横浜スタジアムにいた。震度は5強だった。照明が大きく揺れ、球場外の細長いホテルが隣のビルにくっつきそうになっていた光景が目に焼き付いている。仙台市に実家があるヤクルト・由規は記者室の固定電話で何度掛けても自宅につながらず、顔は真っ青だった。翌12日、兵庫県明石市から横浜に移動してきた楽天ナインの痛々しい姿。仙台市に本拠地を置き、家族も住んでいる。しかし、帰りたくても、帰れない。「僕たちはどうすればいいんですか…」。楽天ナインの心の叫びに対し、何も言えなかったことを思い出す。

 今回の震災で16日、ソフトバンクが福岡市での本拠地試合を中止した。巨人も19日に熊本で予定していた主催試合の中止を発表した。同日、札幌、神戸、東京、名古屋、松山で行われた試合では選手たちが募金活動を実施し、翌17日も各球場で行われた。各球団で義援金も送るなど、迅速な行動が目立つ。東日本大震災を経験したこともあり、球界は被災者支援の動きが非常に早い。

 プロ野球選手の影響力は大きい。地震が頻発している中で、被災者が最も必要としているのは食料、衣類、寝具などの「衣食住」であり、それを買うためのお金だ。17日、2日続けて中止せずに開催されたヤフオクドームでは、ソフトバンクと楽天の選手が試合前に募金活動を行った。大分県出身のソフトバンク・内川は「被災地の方に、野球で元気を届けたい部分とは、また違うところで何かできるんじゃないかと考えた」と言った。プロ野球選手が呼び掛ければ、大勢のファンが募金に協力してくれる。

 開幕前、プロ野球界は野球賭博問題で揺れ、選手は社会的責任の大きさを痛感することになった。社会的責任を常に考えていれば、やるべきことはいくらでもあるし、地震の被災者への助力にもなれる。(記者コラム・飯塚 荒太)

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2016年4月18日のニュース