巨人「左のエース候補」悔しさ秘めて汗、ドラ4田中にぶれない「芯」

[ 2015年8月15日 09:45 ]

自主トレで巨人・原監督(手前)に声を掛けられる田中

 14日時点で12球団トップのチーム防御率2・89を誇る巨人投手陣。ドラフト3位・高木勇は開幕から先発ローテーションの一角を担い、同2位・戸根も左の中継ぎとしてフル回転するなど、新人が大きな戦力となっている。しかし、華やかな表舞台の陰で、悔しさを胸に秘めながら復活に向けて汗を流す将来の「左のエース候補」がいる。

 ドラフト4位・田中大輝(23)。ポンっと左手で軽くグラブをたたき、力感のない柔らかなフォームで腕を振る姿は、杉内を彷彿(ほうふつ)させる。切れのある最速144キロの直球、スライダーを武器に、国学院大時代には大学日本代表に選ばれた逸材だ。

 ところが、この日の丸を背負ったハーレム国際大会で左肩に違和感を覚え、この大会を最後に1年以上、実戦から遠ざかっている。「最初は6月ごろに復帰できるかな、と思ってました。でも良くなってはまた戻っての繰り返しで…。正直、焦りもあったと思います」。出口の見えないリハビリの日々。投手にとって全力で腕を振れないことは何よりも辛いはずだ。それでも、田中は人前で絶対に弱い姿を見せない。自分のやるべきことを黙々とこなし、話しかければいつも爽やかな笑顔で答えてくれる。決してぶれない「芯」の強さにプロ意識の高さを感じる。

 テレビをつければ同期が1軍で活躍している。「もちろん悔しいですよ。僕って本当に負けず嫌いなんです。負けたくない。でも“いまに見てろ”って気持ちが頑張る原動力の一つになってます」。ドラフト1位で将来の4番候補・岡本も2軍戦を終えれば「きょうヒット○本打ちましたよ」と気軽に話しかけてくる。仲間の気遣いの言葉一つ一つがうれしく、エネルギーになっている。

 左肩の状態は回復に向かい、復活への手応えを感じている。患部に負担のかからないフォームを模索し、ようやく光が見え始めた。今季の目標を尋ねると「肩を治して万全で投げること、そして実戦復帰することです。何勝とかはその先に出てくることなので」と言った。暗闇の中でもがいていても、自信が揺らぐことは一度もなかった。

 「プロの世界に入ってみて、やっぱり凄いと感じましたけど、ここで自分がやれるのかな、とは思わなかったです。早く挑戦したい。早く自分の力を試したい。あ~早く投げたいっす!」

 ウズウズする気持ちをこらえきれず、真っ黒に日焼けした顔で笑った。入団が決まった直後には原監督から「肩の故障がなければ、2位ぐらいで指名されていたんじゃないか」と大きな期待を寄せられた左腕。苦しんだ時間が報われる日は一歩ずつ近づいている。(青木 貴紀)

 ◆田中 大輝(たなか・だいき)1992年(平4)8月7日、熊本県生まれの23歳。小4時に川尻ドリームスで野球を始める。必由館では1年春からベンチ入りし、2年春からエース。3年春に県大会で準優勝も甲子園出場経験なし。国学院大では4年春に東都大学リーグで4勝(1敗)を挙げ、ベストナインに選ばれた。座右の銘は「前後際断」。50メートル走は6秒1、遠投はノーステップで90メートル。1メートル82、76キロ。左投げ左打ち。

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2015年8月15日のニュース