【野球のツボ】このまま消えるのか?阪神のあのポーズ

[ 2013年8月8日 10:40 ]

ベンチ前で歓喜のパフォーマンスを披露する阪神ナイン

 阪神の得点シーンでの「決めポーズ」が話題になっているという。「相手へのリスペクトがない」「挑発している」など、最近聞くのは、否定的なものが多い。そう言えば、このところの阪神の得点シーンで、派手なポーズを見ることが少なくなったような気がする。

 プロ野球は「勝てば官軍」的なムードが常にある。チームが好調なときは「ベンチのムードを変えた」とか「新しいチームの象徴」と言われたものが、巨人との差がつき始めると「あんなことしているから」と指摘される。そんな例は過去にもいくらでもあった。阪神ベンチに新しいポーズを流行らせた1人でもある西岡の戦列離脱も、否定的な意見を強めるきっかけになったと思う。

 私は昔気質の人間だけに、あのポーズについては、春先から「見ていて、あまり気持ちいいものじゃないな」と感じていた。点が入って喜ぶ。それはいいのだが、戦う相手も勝つためにプレーしている。そして、マウンドやグラウンドに相手チームが守っている前で、大はしゃぎするのは、控えるべきだ、と考えるタイプだ。ベンチ総出での派手なポーズは、悔しい思いをしている相手に追い打ちをかけるものになると思う。

 WBCでは、楽天・松井稼の提案で、手を少し広げるようなポーズを選手たちが行っていた。メジャーで生まれた「バーン」という決めポーズで、塁上の打った打者とベンチでポーズを交わしていたシーンを覚えている人も多いはず。楽天でも「バーン」は受け継がれている。ベンチの一体感を生むための、こうした決まり事まで否定するわけではない。得点が入っても喜ぶな、とも言わない。ただ、物事にはほどよい程度というものがある、ということだ。

 前々回のWBCで日本に勝った韓国選手がマウンドに国旗を立てて喜んだことがあった。あれも、相手への敬意を感じさせない行為で、気分がいいものではない。勝者がいれば、敗者もいるのが、スポーツの現場。そのへんを理解した上で、どうベンチの一体感を出すかを考えればいいこと。プロがやっていることは、子供たちがすぐにマネをする。野球人としては、派手に喜ぶことより、礼儀・マナーを野球を通じて学んでもらいたいと思っている。(前WBC日本代表コーチ)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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