松井ショック…試合中に左翼席からファン転落死

[ 2011年7月9日 06:00 ]

<レンジャーズ・アスレチックス>ファンの転落事故現場をのぞき込む警官ら

ア・リーグ アスレチックス0―6レンジャーズ 

(7月7日 アーリントン)
 アスレチックス・松井秀喜外野手(37)が出場した7日(日本時間8日)のレンジャーズ戦で、試合中に左翼席から転落した観客が死亡する事故が起きた。2回にレ軍のジョシュ・ハミルトン外野手(30)がファウルボールを観客席に投げ入れたところ、身を乗り出して捕球を試みた男性ファンが誤って約6メートル以上の高さから落下。病院に緊急搬送された後に死亡し、松井も大きなショックを受けた。

 試合後のベンチ裏は、重苦しい空気に包まれていた。レ軍のクラブハウスは完全非公開とされ、ア軍側も通常より10分以上も報道陣への開放時間が遅れた。この間に、両軍ナインに男性の死亡が初めて伝えられ、松井は「残念です。それだけです」と声を詰まらせた。

 ア軍先発のハーデンも「試合なんてどうでもいい。ひどいことが起きてしまった」と動揺を隠せない。一方、レ軍のノーラン・ライアン球団社長も憔悴(しょうすい)した表情で会見に臨み、「遺族には言葉がない。ハミルトンも他の選手も衝撃を受けている」などと話した。

 痛ましい事故が起きたのは試合中の2回だった。ア軍ジャクソンの打球は左翼線へのファウル。観客席からはね返ってきたボールを拾った昨季ア・リーグMVPで左翼手のハミルトンが自身の定位置後方の左翼スタンドに向かって投げ返した。大リーグでは日常化しているファンサービスの光景。このボールがスタンドにわずかに届かず、前のめりに捕球しようとした男性が6メートル以上も下にある左翼フェンスと観客席の隙間のコンクリートに頭から落下した。

 男性はシャノン・ストーン氏で、近郊に住む39歳の消防士だった。同氏の隣で観戦していたファンは「真っ逆さまに落ちていった。何とか彼をつかもうと思ったが間に合わなかった」と証言。さらに事故を目撃した他の観客によると、落下後は頭から大量の血が流れ出ていたという。現場は左中間にあるビジターチームのブルペンの近く。中継ぎ右腕のジーグラーは、男性がまだ意識のある状態で搬送される姿を目撃していた。それから1時間内に男性は死亡。「(救急隊員らに)“息子を頼む、息子と来てるんだ”と言っていた。話もできていたから無事だと思っていたのに…」と涙ながらに振り返った。

 レ軍のロン・ワシントン監督は「本当に悲しいことが起きた。ジョシュ(ハミルトン)も大丈夫であってほしい」と、主砲の精神的ショックを憂慮。このため、8日の試合は本人の意向次第で欠場させる方針を示した。

 レンジャーズ・ボールパークでは、昨年7月6日にも、一塁側の2階席からファンが転落。1階席の観客の上に落ち、頭蓋骨骨折の大ケガを負う転落事故が起きていた。男性が落ちた隙間に防護ネットなどは一切なく、警察官らによる現場検証は深夜にまで及んだ。

 松井はこの日「3番・DH(指名打者)」での出場だったが、守備に就いていれば左翼だっただけに、衝撃の大きさは計り知れない。

 ◆大リーグ近年の試合中の死亡事故
 ▽03年9月17日 ジャイアンツ―パドレス戦の8回、右翼側の壁伝いに歩道に下りようとしたジ軍ファンの男性が誤って約7メートル下に転落して死亡。

 ▽09年4月6日 エンゼルス―アスレチックス戦で、右翼席でファン同士がけんかの末、後頭部を殴られた27歳男性が地面に頭を強打。搬送された病院で死亡した。

 ▽11年5月24日 ロッキーズ―ダイヤモンドバックス戦で、27歳男性が外野席階段でバランスを崩して約6メートル下に転落。2日後に亡くなった。

 ◆レンジャーズ・ボールパーク レトロ調新球場として、94年4月に開場した天然芝球場。収容人数は4万9170人。左翼ポールまで332フィート(約101・2メートル)、右翼ポールまで325フィート(約99・1メートル)で、打者有利の球場として知られる。電光掲示板のある左翼フェンスは高さ14フィート(約4・3メートル)だが、観客席は転落防止の手すり上部までは高さ約20フィート(約6・1メートル)ある。

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