新甲子園1号!新井サヨナラ本塁打

[ 2008年5月1日 06:00 ]

<阪神・ヤクルト>9回裏無死、サヨナラ弾を放った新井は飛び上がって喜ぶ

 【阪神6―5ヤクルト】まさに千両役者や!阪神・新井貴浩内野手(31)が30日のヤクルト戦で9回に移籍後初となるサヨナラ本塁打を放った。先制打を含む今季初の4安打と大爆発。ようやく飛び出た今季甲子園チーム1号に“新井劇場”は最高にヒートアップした。これで打点を挙げれば負けなしの12連勝。首位を走るチームは貯金12となり、4月終了時では球団最多となった。乗ってる背番号25が歴史的快進撃を引っ張る。

 絶叫した。腹の底から叫んだ。「入れ!」。浜風に乗った打球は左中間へと伸びる。白球がスタンドで弾むのを見て、新井は一塁を回ったところで跳び上がった。二塁を回ると、右手人さし指を突き上げる。三塁を過ぎてからヘルメットを投げ捨ててホームへ。あとはもう分からない。気が付いたらヒーローはグラウンドに転がっていた。
 「覚えてない。蹴られたり、脱がされそうになった。もう何て言っていいか分からないけど、本当にうれしいです」
 新井が打ったリニューアル甲子園の記念すべき第1号。チームの本拠地9試合目でようやく出た一発は、待ちこがれたファンを魅了する劇的なサヨナラアーチだ。5―5で迎えた9回。先頭打者で2―2から真ん中へ来た甘い133キロのフォークだった。「“頼むから行ってくれ”と思いながら走った」。27日の巨人戦(甲子園)ではクルーンからサヨナラ押し出し四球。バットを振らずにサヨナラのヒーローとなってから3日、今度はバットで決めた。広島の4番を打ち、昨オフFA移籍してきた男が、ついに見せた真価だった。
 一発だけではない。昨年10月6日の横浜戦以来となる4安打。おまけに打点を挙げた試合は12連勝と、不敗神話もつくり上げた。「調子は自分でもよく分からない。気持ちでやっているので」。優勝するために広島を離れた今、チームの首位快走がパワーを与えてくれている。一昨年、チームの低迷とともに夏場を過ぎてから早出練習にも顔を出さなくなったときのこと。球団へ届いたファンの手紙の内容を聞かされた。「こんなに負けて悔しくないのか」。その悔しさが涙のFA会見へつながり、今がある。
 これでチームは開幕から4月を連敗なしで乗り切った。貯金12は4月終了時点で球団初。「開幕から1カ月、いいスタートが切れた」。冷静に振り返る岡田監督の口元は自然と緩む。9回表に同点にもかかわらず藤川を投入し、右翼から左翼へ浜風が吹く中で「ホームランは右(打者)しかいない。新井しかいないと思っていたよ」。そんな読みがずばりと当たり、また笑みがこぼれた。
 甲子園の夜。六甲おろしの大合唱はいつまでもやまない。それは猛虎の進撃が5月も続くことを予感させてもいた。

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2008年5月1日のニュース