阿部詩 世界一返り咲き「パリの慟哭」から321日「物語がまた始まった」

[ 2025年6月16日 01:30 ]

柔道 世界選手権第2日 ( 2025年6月14日    ハンガリー・ブダペスト )

女子52キロ級決勝でコソボ選手を下し、優勝を決めた阿部詩=ブダペスト(共同)
Photo By 共同

 女子52キロ級の阿部詩(24=パーク24)が5度目の優勝を果たした。2連覇を狙った昨夏のパリ五輪で2回戦敗退を喫し涙に暮れてから1年、目標の世界王座奪還を果たした。

 世界王座に返り咲いた。試合会場で人目もはばからず号泣した「パリの慟哭(どうこく)」から321日。阿部詩は畳の上で笑顔を見せると直後、左袖で目元を拭った。「この舞台に立ちたいと思うまでにも時間がかかった。いろんな方の支えで来られた。うれしくて、なんか(涙が)出てきた」。こみ上げる熱いものを抑え切れなかった。

 パリ五輪後、一時は引退もよぎるほどどん底に沈んだ。2カ月の休養を経て再び立った畳の上で自分の居場所を再確認。そこから目の色が変わった。超攻撃スタイルに加え、磨いたのが防御。3回戦では宿敵のブシャール(フランス)を倒し、決勝はパリ五輪銀のクラスニチを豪快な背負い投げで仕留めた。5度目の頂点に輝き優勝回数でも日本女子では谷亮子の7度に次ぐ単独2位に浮上した。

 兄・一二三が準々決勝で敗れ、23年大会以来の兄妹同日Vの夢はついえた。自身も試合中で「凄い歓声が起きているのは感じていたが、試合に集中していた」という。心を乱さず、強い気持ちで戦い抜いた。パリ五輪で自身が敗れた後、一二三が金メダルを獲得したように今度は妹が兄の分も悔しさを晴らした。一二三は「こんな強いのに五輪で負けるなんてあり得ない。びっくりした」と感心しきりだった。

 初戦から5試合危なげなく勝ち抜いた。「一歩を踏み出せるような金メダルになった」と話す。日本時間15日は父の日。観客席では父・浩二さん(55)と母・愛さん(53)が柔和な笑みで見守っていた。絶望の日々を乗り越えての世界一奪還。復活のヒロインは言った。「まだ道は続く。阿部詩という物語が、また始まった」。まだ序章。3年後のロサンゼルスでクライマックスを迎える。

続きを表示

この記事のフォト

「阿部詩」特集記事

「羽生結弦」特集記事

スポーツの2025年6月16日のニュース