マラソン大会の前日の過ごし方。食事や練習、飲酒していい?【ランナー直伝】
マラソンシーズン到来。中には、初めてフルマラソンに挑戦するという方もいることでしょう。トレーニングの成果を十分に発揮するためには、前日・当日の準備が大切です。
本記事では、大会前の過ごし方や食事メニュー、睡眠時間など、マラソン大会前の準備について、これまで多くのマラソン大会を走ってきた筆者の経験を交えつつご紹介します。
1.前日の食事、カーボローディングは必要?
「マラソンの前日はカーボローディングしよう」という声をよく聞きます。カーボローディングとは、運動時にエネルギーとして使用されるグリコーゲンを、食事によって多く体内に貯蓄するための食事方法のこと。
そのために元となる炭水化物を多く摂取しようと、パスタなどの炭水化物を普段以上に食べるようなパターンが見られます。
カーボローディングではなく、主食をやや増やす程度でよい
確かにマラソンでは多くのエネルギーが消費されるため、カーボローディングは有効な食事法と言えます。
しかし、単純にいつもより大量の炭水化物を食べたのでは、かえってパフォーマンスが低下してしまうかもしれません。食べ過ぎで身体が重く、動きも鈍いという事態になりかねないでしょう。
また、本来のカーボローディングは前日だけでなく、3~5日程度の期間をもって行われるものです。そのため、いわゆる市民ランナーであれば、さほどカーボローディングを意識する必要はありません。
意識するのであれば、ご飯などの主食をいつもより少し増やしつつ、おかずを減らして食事量を調整するほうがよいでしょう。
2.マラソン大会前日、控えた方がいい食べものは?
以下のようなものは控えることをオススメします。
- 生もの
- 油が多いもの(揚げものなど)
- 食物繊維が多いもの
これらは胃腸に影響し、当日の腹痛や胃もたれなどトラブルを引き起こしかねません。
3.大会前日、お酒は飲んでもいい?
お酒もできるだけ控えた方がよいでしょう。
お酒は肝臓に負担をかけます。肝臓には先ほど登場したグリコーゲンが貯蓄されているため、肝臓に負担をかけるとエネルギーをうまく生み出せなくなり、パフォーマンスの低下を招きかねないのです。
お酒を飲む代わりにオススメなのが、体内の水分状態を調整する「ウォーターローディング」です。一度に大量の水分を摂取するのではなく、1日を掛けてこまめに水分を補給してみてください。
暑い時期であれば、これに電解質の補給もプラスするとよいでしょう。本来であれば1か月ほど前から取り組むのが理想ですが、前日でもある程度の効果は期待できます。
4.前日までトレーニングしていいの?
とにかく走力を少しでも上げようと、前日までトレーニングに取り組むランナーは少なくありません。しかし私なら、前日は“できる限り動かない”ことをオススメします。
どのような運動でも、それに応じて身体は疲労します。これを一晩で回復しきれなければ、大会本番を最高のパフォーマンスで走り切ることはできないでしょう。ですから、前日はできるだけ運動せず、疲労を溜めないことに努めてみてください。
むしろストレッチやマッサージ、治療など回復に時間を使うとよいでしょう。ただしマッサージは、やり過ぎると翌日に“揉み返し”が起きる懸念があります。
どうしても走りたい場合は
中には「走っていないと不安でしかたない」という方がいるかもしれません。そういう方は、疲労が残らない程度の運動ならば問題ないでしょう。
2~3kmだけゆっくりジョギングをする、軽いウィンドスプリントを数本だけ行うなど。早めの時間なら、翌日本番までには回復してくれるはずです。
また、これによって自分の調子を確認できれば、翌日に向けたモチベーションを高められるかもしれません。
5.十分な睡眠を取ろう
睡眠不足は走りのパフォーマンスを低下させます。そのため、十分な睡眠を取るように心がけてください。
どれだけ眠ればよいのかは、その人によって異なります。スタート時間から逆算して、自分で十分だと思えるだけの睡眠時間を確保できるよう就寝してください。
なお、質の高い睡眠を得たいのであれば、就寝の1~2時間前を目処として入浴し、その後ストレッチで軽く身体をほぐすという流れをオススメします。体温が程よい状態になり、身体もスッキリして眠りやすくなるでしょう。
6.本番に向けた情報&アイテムチェック
会場までの経路や受付、荷物を預ける場所を確認しておく
前日のうちに、出場する大会の情報をチェックしておきましょう。会場までの経路や会場内での行動(受付、荷物預けなど)などは、あらかじめイメージしておくと当日スムーズです。
初めて出場する大会では、スタート地点が分からずウロウロ……なんていうことも少なくありません。
コース状況や給水地点をチェックしておく
また、コースの起伏や給水地点なども確認しておきましょう。自分がどんなレース展開で走りたいのか、イメージトレーニングしておくと落ち着いて本番に臨めます。
ただし、本番は何が起きるか分かりません。必ずしもイメージ通りに走れるとは限らないことも、しっかり認識しておいてください。そうしないと何か起きた際、「もうダメだ」とネガティブな感情に繋がりかねません。
ウェアや補給食の用意、ゼッケンや計測チップの装着などを行っておく
当日のウェアや補給食なども、前日のうちに確認して用意しましょう。当日、時間がなくなって慌てることがなくなります。事前送付されたゼッケンや計測チップも、できれば付けておくと安心です。
なお、ウェアは天候・気温に合ったものを選ぶことが大切。寒いようであればスタート直前まで雨合羽を着用し、直前に捨てるなどの対策もオススメです。
7.当日の朝食は食べ過ぎず、3時間前を目安に食べ終える
消化時間などを考えると、当日の朝食はスタート3時間前までには食べ終えておきたいところです。食べ過ぎると消化が追いつかず身体が重く感じたり、胃腸にトラブルが起きる可能性があるので、“腹八分目”を意識してください。
エネルギー補給用のゼリー飲料などは移動時などに摂取しても構いません。
水分は移動中もこまめに飲んでOK
水分は直前まで、こまめに取りながら移動するとよいでしょう。スタート準備に入ったらトイレに行き、以後の水分補給はレース中の給水所に任せます。直前まで飲み続けると、トイレに行きたくなってしまいます。
なお、コーヒーなど利尿作用のあるものは、控えておいてください。
8.移動は時間に余裕を持って
会場到着はギリギリにならないよう、時間に余裕を持って移動しましょう。電車が遅延したり、会場が大混雑で送迎バスに乗れない可能性もあります。時間に余裕がなくなると焦りが生まれ、どんどん不安になってきます。
私も過去に遠征レースで、朝起きたら電車が止まっていた……という経験がありました。また、時間がないからと荷物を持ったまま会場を駆け回れば、不要な疲れに繋がりかねません。
早めに会場へ到着しておけば、心を落ち着けてレースモードに切り替える時間を持てます。来場者の状況を見て、混まないうちにトイレに行くといった行動もできるでしょう。
9.ウォーミングアップのやり過ぎに注意!
大会会場に到着すると、入念なウォーミングアップに取り組むランナーの姿を見ます。結論から言うと、私はウォーミングアップで走りません。
“ドリル”と呼ばれる基礎運動や、股関節や肩甲骨まわりを中心とした可動域を広げる運動を行っています。
スタート直後をウォーミングアップにするのもアリ
ウォーミングアップの目的は身体を温めること。ですから、必ずしも走る必要はありません。あまり直前に走り過ぎると、そのままスタート後にも疲労が残ってしまうでしょう。せっかくウォーミングアップで走り込んでも、多くの大会ではスタートまでの待ち時間で身体は冷えてきます。
また、スタート直後の1~2kmは道が大勢のランナーで混雑し、想定しているより遅いペースでしか走れません。それなら、その1~2kmをウォーミングアップと位置づけるのもよいのではないでしょうか。
ただし、先頭集団でいきなりハイペースの走りを展開するランナーに関しては、話が別です。速いペースで走るためには、あらかじめジョギングや流しなどで“走れる準備”を整えておく必要があります。
ご自身の想定されるレース展開に合わせ、ウォーミングアップの内容を検討してください。
10.万全の状態で完走を目指す
準備がしっかりできていると安心感に繋がり、大会にも落ち着いた精神状態で臨むことができます。いくら十分なトレーニングを行っていても、気持ちに焦りや不安があればパフォーマンスは低下するものです。身体だけでなく精神面も含め、万全の状態で大会を走れるよう準備してください。
[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。また、ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】https://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>
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