羽生、V4も「下手くそ」 練習で激突、メンタルに影響も

[ 2015年12月27日 05:30 ]

右手に優勝杯、左手に花束、首からメダル、賞状を口にくわえ引き揚げる羽生

フィギュアスケート全日本選手権第2日

(12月26日 北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ)
 14年ソチ五輪男子金メダリストの羽生結弦(ゆづる、21=ANA)が4連覇を達成した。男子フリーで183・73点をマークし、合計286・36点で優勝。この日の公式練習で村上大介(24=陽進堂)と激突するアクシデントがあり、フリーでは2度の転倒があったが、世界選手権(来年3月30日~4月3日、米マサチューセッツ州ボストン)の代表にも決まった。宇野昌磨(18=中京大中京高)が267・15点で2位に入り、世界切符を確実にした。

 五輪を制し、世界最高得点も保持する羽生が、演技を終えた瞬間に思った。「下手くそだな」。2週間前のGPファイナルでマークした330・43点に遠く及ばない286・36点。冒頭の4回転サルコー、続く4回転トーループは決めたが、演技後半に2度の転倒。オーサー・コーチは言う。「彼(羽生)も人間だ」。言葉を聞いた羽生は笑った。「もとから僕は人間だと思っている」。常にノーミスのマシンではない。生身の21歳に4連覇の満足感はなかった。

 「もう悔しいですよ。メラメラですよ。煮えたぎってます」

 昨季の悪夢がフラッシュバックした。昼の公式練習で、ステップに入ろうとした羽生と村上が衝突。昨年11月、中国杯でのせい惨な激突事故を思い起こさせるシーンだったが、村上と声を掛け合って練習を再開した。「自分がぶつかったことは反省している」とした上で、「(昨季の)NHK杯の感覚に若干、陥っていたのかな」と話した。昨季の中国杯後のNHK杯では5、6人で滑る練習が怖かった。この日、フィジカルではなくメンタルに影響はあったことを認めた。

 映画「陰陽師」の音楽を使った今季フリー。タイトルは自ら考えた「SEIMEI」だ。音の響きの美しさに加え、主人公・安倍晴明の「晴明」、清く明るくという意味の「清明」などさまざまな意味を込めた。「死と隣り合わせ」と言った中国杯の事故。「SEIMEI」は「生命」という解釈もできる。死を覚悟した経験すらも糧とし、氷上に立ち続けてきた。今大会前には左足首を痛め練習を中止した日もあったが、生命力を振り絞って15年の闘いを終えた。

 4連覇で来年の世界選手権代表に決定。昨季は同じオーサー・コーチに師事するフェルナンデス(スペイン)に敗れて銀メダルに終わった。「今回の試合は反省点が多い。しっかり練習して、こんな演技は二度としないように頑張っていきたい」。3年前、同じ会場で初めて全日本王者になった。「3年前と比べて緊張感のコントロールや認め方、付き合い方はうまくなった」。思い出のリンクで確かな成長を実感した21歳が、金メダル奪回へ突き進む。

 ▼昨年の中国杯での激突 14年11月8日、フリー直前の6分間練習で中国の閻涵と正面衝突。頭と顎から流血してフラフラだったが、頭に包帯を巻き、顎にばんそうこうを貼って強行出場した。ジャンプで5度も転倒しながら何とか最後まで滑りきり、合計237・55点で2位。9日に緊急帰国して検査を受け、頭部と下顎が「挫創」、腹部と左大腿が「挫傷」、他にも右足関節捻挫と診断され、全治2~3週間の見込みと発表された。

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