ベルギーハーフのイケメン七戸龍 連覇で初世界切符

[ 2013年5月13日 06:00 ]

男子100キロ超級で2連覇を果たし、スタンドの声援に笑顔を見せる七戸龍

柔道全日本選抜体重別選手権最終日

(5月12日 福岡国際センター)
 飛躍を期待される日本柔道界の“ドラゴン”が世界切符を勝ち取った。世界選手権(8月26日開幕、リオデジャネイロ)の選考会を兼ねて行われ、男子100キロ超級は昨年覇者の七戸龍(24=九州電力)が決勝でロンドン五輪代表の上川大樹(23=京葉ガス)に一本勝ちして連覇を達成した。極真空手の猛者だった父とベルギー出身の母を持つハーフのイケメン柔道家。大会終了後に行われた全日本柔道連盟(全柔連)の強化委員会では初めて世界選手権代表に選出された。

 2年前は誰も注目していなかった。注目しようもなかった。七戸は道着を着た選手ではなく、スーツを着た会場の裏方だったからだ。当時は九州電力の新入社員で、与えられた仕事は選手誘導係。しかし、初出場で栄冠をつかんだ昨年に続き、今年は連覇で日本重量級を背負う存在としての役割を勝ち取った。

 「全日本で自分の柔道ができずに悔しかった。そんなに緊張する必要はないじゃないか、といろんな人に声をかけられた」。2週間前の全日本選手権ではベテラン棟田の老かいさの前に旗判定で敗れた。消極的になり持ち味を出せなかったがこの日は同じ過ちを繰り返さなかった。初戦を無難に突破すると準決勝では巨漢の石井竜太を支え釣り込み足で転がした。決勝は上川の技に合わせて小外掛けで有効。残り1分で内股で技ありを奪うと、けさ固めに持ち込み一本勝ちした。

 日本とベルギーのハーフで日本人離れした肉体の持ち主。道着を提供するミズノ関係者は「ウエストは90キロ級の選手と同じくらいに絞り込んである」と言い、118キロといえども引き締まったアスリート体形だ。九州電力の江上忠孝監督は「リネールと似ているタイプ」と無敵王者の名前を引き合いに出した。

 そのリネールには2月のグランドスラム・パリで13秒で敗れた。主要国際大会での優勝もなく、次のステップは世界での活躍。極真空手の世界大会でも活躍した父・康博さんには、大学入学時に「25歳までに日本一になれ」と言われた。その約束は果たし目標は「世界一」へと書き換わった。3年後の五輪と同じリオが舞台の世界選手権へ。「出るからには絶対勝ちたい」と日本のドラゴンが世界に牙をむいた。

 ◆七戸 龍(しちのへ・りゅう)1988年(昭63)10月14日、那覇市出身の24歳。父は全日本極真連合会副理事長の七戸康博。空手と同時並行で7歳から柔道を始め、中学から柔道に専念。那覇西高から福岡大に進み、九州電力では福岡営業所お客様センターに勤務。法人営業の業務もこなしつつ福岡大を拠点に練習している。11年講道館杯3位、12年グランドスラム東京3位。得意技は大内刈り。弟の虎(23)も100キロ級の選手。1メートル93、118キロ。

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