真央 転倒、流血乗り越え逆転V

[ 2008年3月22日 06:00 ]

フィギュアスケート世界選手権の女子で初優勝を飾り、金メダルを手に笑顔の浅田真央

 代名詞のジャンプ転倒を見事にカバーして、真央が初の女王に輝いた。フィギュアスケート世界選手権第3日は20、イエーテボリ(スウェーデン)のスカンジノービアムで女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)2位の浅田真央(17=中京大中京高)は、最大の武器、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)でいきなり転倒したが、見事に立て直してフリーでは2位の121・46点をマーク。合計185・56点で逆転し、日本人5人目の世界選手権女王となった。浅田はジャンプ以外でも勝負できる強さを世界にアピールした。

【世界選手権 Go!アスリート】

 プログラム最初の大技の失敗に、誰もが初優勝をあきらめた。トリプルアクセルの体勢に入った浅田が左足で踏み切ろうとした瞬間、重心が後方に傾き尻もちをついた。どよめく約1万人の大観衆だけでなく、壁までスライディングした17歳も「もうダメだ」と思った。着地ではない。「練習でもない」という踏み切りでの転倒。得点は0。それどころか転倒は減点1。基礎点7・50点の最大の武器でマイナス8・50点を背負った。

 冒頭での失敗は精神的ダメージが大きい。しかも、腰を強打し、左太腿付け根は血がにじんだ。2月後半に左足首を捻挫してジャンプの練習を1週間できなかった不安もある。SP2位からの逆転を期したフリーの滑りだしは、最悪だった。

 「でも、頑張らないといけないと思った」。続く2連続3回転を成功させたが、3回転ルッツはまたもエッジの減点を受けた。得点源の2種類目の2連続3回転は回転不足。スピンなどで盛り返したものの、技術点はSP首位のコストナーを0・01点上回っただけで、フリー1位のキム・ヨナには3・93点も離された。

 その浅田を優勝に導いたのは演技点だった。持ち味の滑らかなスケーティング。今季開幕前にロシアでバレエを学んで培った表現力。全5項目で2人を上回り、計2点以上の差をつけた。先に演技を終えた2人を合計点で逆転。優勝が決まると、たまらず涙を流した。

 フィギュアの常識をも覆した初優勝だった。昨年末、日本でリラックスする浅田の姿を見たアルトゥニアン・コーチから「こっちでやった方がいいんじゃないか。自分もできるだけ行くようにする」と言われ、中京大に拠点を移した。だが、1月末に同コーチが「途中からでは責任を持って見ることができない」と言いだし、2月の四大陸選手権後に師弟関係を解消。コーチに見捨てられた形となり、1人で調整してきた。トップ選手で過去にコーチ不在を経験したのは5度女王に就いたミシェル・クワン(米国)だけ。しかも、クワンはコーチ不在の02年は優勝できず、再びコーチをつけた。伊東強化部長は「選手には精神的な支えも必要。凄い」と称えた。

 05年12月のGPファイナル優勝でシニアデビューを飾ってから2年3カ月。ついに手にした女王の座を「凄くうれしい」と話した。体が成長し、ジャンプのミスに苦しんだ今季最後に見せた新境地。「夢」と話す10年バンクーバー五輪での金メダルに向け、浅田が大きな脱皮を果たした。

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2008年3月22日のニュース