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大会成功へ“ONE TEAM”の司令塔 ボランティアリーダー5つの心得

[ 2019年11月4日 09:00 ]

 「大会の顔」と呼ばれるボランティアの中に、リーダーというポジションがある。運営側とコミュニケーションを取りながら、現場スタッフをまとめる役回り。マラソン・競歩の札幌移転が決まり、新たなボランティアの育成や団結が急務となる中、リーダーの役割はより重要になる。世代も国籍も異なる集団をまとめるリーダーに必要な力とは何か。エキスパートは5つのポイントを指南した。

 本番開幕まで残り9カ月となる中、急転直下でマラソン・競歩の札幌移転が決まった。札幌市は元々サッカー会場の一つだが、実施競技が増えたことからボランティアの育成が急務に。決定から一夜明けた2日には同市で研修会が行われ、参加者からは「マラソンを手伝いたい」と意気込む声が上がった。

 新たな課題に直面し、役割がより重要視されるのが、ボランティアの中にあるリーダーというポジションだ。

 期間中のボランティアは、競技運営に関わる約8万人と、観光案内などを行う約4万人の計12万人。先月から11都道府県で共通研修が始まり、来年3月に配置や活動場所が決まる。役割によっては十数人単位のチームで活動するが、その中で司令塔としてシフト管理や出欠確認、運営側と現場との橋渡しなどを担うのがリーダー。初心者も多いチームのまとめ役となり、酷暑や不測の事態に臨機応変に対応することが求められる。組織委や開催自治体は過去の実績や希望を参考に候補者を選び、来年4月からのリーダーシップ研修を経て最終決定する。

 では、年齢も性別も国籍も異なる集団が「ONE TEAM」の精神で活動するために、リーダーに必要な心得とは何か。ロンドン五輪など過去3大会でボランティアを務め、リーダー経験もある「笹川スポーツ財団」特別研究員の西川千春さん(59)は(1)よく通る声で指示(2)現場対応力(3)体調を見極める(4)笑顔と感謝を忘れない(5)会社を持ち込まない――が大切だと語る。

 特に暑さ対策が大きな課題として残る中、意外な落とし穴は「楽しいこと」。西川さんは「楽しいから休憩を忘れてやり過ぎてしまう人もいる。どんな状況でも仲間の体調を見極める力や、休憩、水分補給を促す冷静さが必要」と語る。

 また、中高年の会社員が陥りがちというのは「会社を持ち込んでしまうこと」。会社のように効率を求めてチームを仕切ったら空回りしてしまう。ボランティアは部下ではなく、立場は全員同じだと強調し「一人一人に敬意を払うことが凄く重要」と力を込めた。

 首都圏での活動を希望している参加者からは「マラソンだから札幌と言われたらどうしよう」と戸惑いの声が上がる。だが、どの会場でも本番では想定外の事態はつきもの。頼もしいリーダーを中心に12万人が大会成功の原動力となる。

 《競技運営8万人、40代が最多22%》競技運営に関わる約8万人のボランティアは10~80代までバランスよく採用され、40代が22%で最も多い。外国籍の人は12%で約120の国・地域から採用された。役割は9つ。最も多くの人数が関わる「案内」は観客や関係者の案内やチケット確認などを行う。このほか、関係者の移動車両を運転する「移動サポート」、インタビューの通訳などを行う「アテンド」、医療関係やドーピング検査をする「ヘルスケア」、表彰式やメダルの管理を手伝う「式典」がある。

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2019年11月4日のニュース