×

【横浜・宮市―角田対談<上>】度重なる故障から復活した2人が今季を振り返る サポーターに感謝

[ 2023年12月30日 14:39 ]

横浜のFW宮市(左)とDF角田(右)
Photo By スポニチ

 昨季王者として2003、04年以来の連覇を狙った横浜F・マリノスは惜しくも2位で今季を終えた。FW宮市亮(31)が右膝前十字じん帯断裂から復帰した一方で、終盤はDF角田涼太朗(24)ら守備陣を中心に故障者が続出。下顎骨を骨折した角田も強行出場して優勝した神戸と終盤まで優勝争いを繰り広げたが、あと一歩及ばなかった。ともに長期離脱から復帰した宮市と角田が今季を振り返った。

 ――激動の1年間、お疲れさまでした。
 宮市「最後優勝したかったのはみんなの思いだったけど、(ACLは)最低限勝って終われたのはよかった。1年前は復帰できるかどうかという不安の中でずっとボールを蹴ったり、試合のことまで考えられなかった。そういうところから1年後にこうしてサッカー選手としてまたピッチに立てる幸せを感じた1年だった。支えてくれたみなさんに感謝したい。まだまだ現役としてお世話になった方に恩返しできるようにピッチの上で頑張りたい。ケガなく終えられたのは大きい。復帰してから半年以上プレーできた自信もあるので来季につながるシーズンになった」
 角田「振り返ると苦しいこと、悔しいことの方が多かったけど、このチームのためにという思いだけでここまでやってこられた。本当だったらアゴを骨折した時に(12月13日のACL)山東戦を目指すという話だった。少しでも早く復帰してチームに貢献したいという思いが自分を動かしてくれた。このチーム、この仲間で戦える時間を大切にしたいという思いがあった。本当にこのチームのおかげでプレーできた。もちろん苦しかったけど、この経験はどれも自分のキャリアにとっても素晴らしいものだった。いろんな人に支えられて自分が代表してピッチに立っている。感謝の気持ちをプレーで表現しないといけないと思っていた」

 ――角田選手がヘッドギアを着用して強行出場した姿には心を揺さぶられたサポーターも多かった。改めて早期復帰したいという気持ちになったのは?
 角田「もちろん最初は今年はもう駄目なのかなと思いました。幸いにも脳には異常なくて、体も動く。食事ができなかったので厳しいかなと先生とも話していた。シーズン中に戻りたいということからスタートした。何としても出たかったのが一番。僕自身、今年に懸ける思いが強かったし、チームも苦しんでいて、それを見ているというのができなかった。試合に出るためには何をしてでも出たかった。いろんな人に支えられて実現できた。自分だけの力だけじゃできなかった。3週間前までベッドに寝ていた人間を一緒にピッチに立たせてくれた。それを認めてくれたチームメートも。それを認めてくれたチームメートにも感謝しているし、実現させてくれたキッチンの方や手術してくれた先生の全ての方のおかげまたピッチに立てた。離脱していた期間は短かったけど、チームでやることの大きさは感じました」

 ――サッカー人生を棒に振ってしまう可能性もあったが、それを覚悟してでも復帰した。
 角田「先のことを考えたら、もしかしたらやらない方がいいという声もあったと思いますし、そういう意見も正解。でも、そんなことは考えられなかった。この瞬間でこのチームのために戦いたい思いだけ。この先サッカーができなくなるとか、命に別状があるとかだったら考えないといけないけど、そんなことは考えられなかった」

 ――お互いにリハビリ中の様子はどう見ていた?
 宮市「ツノは顔が変わっちゃっていたし、食事もできないから大丈夫かなと思っていた。試合に出られることが可能だと聞いて凄くポジティブにやっていた。すぐに僕らと一緒に練習をしていたので、すげーなと思いながら。多少なり怖さはあるだろうけど、そういうのも見せずにやりたいというのは練習から伝わってきた。本当に心強い。2年前に彼がプロになってから僕もマリノスに来させてもらいましたけど、2年前のツノと今では違う。当初からポテンシャルは凄かったし、もっとリーダーシップが出てきてマリノスの柱になっていると思うし、凄く頼りがいがある。そういうのをリハビリ中から見せていた」
 角田「いろんな人が感じていると思いますけど、今年は長期離脱の選手がたくさん出てしまって、自分も人生で初めて手術してリハビリをしたけど、マリノスの選手ってリハビリに手を抜かない。腐る選手が一人もいない。みんなチームのためを思ってやっている。去年、亮君がリハビリしている姿、プロフェッショナルの部分をみんなが見ていたからこそ、今年のチームに対する皆の思いにつながっていると思っている。今年、この順位にいられたのは大げさじゃなく亮君の去年の姿勢がチームの力となって出ていると思う」
 宮市「大げさじゃないですか?(笑い)」
 角田「誰も弱音を吐かないし、みんながポジティブ。小池龍太選手とか1年間ずっとリハビリで自分も一緒にやっていましたけど、本当に辛いと思うけど、チームのことしか考えていない。そういう姿勢に応えなきゃいけないという気持ちはやっている選手は強くなる」

 ――苦しい時期もあったが、ポジティブでいられる要因は?
 角田「このチームにいるのが大きいと思う。本当に大好きだし、スタッフも含めていいチームメートに含まれている。わからないけど他のチームだったら腐っていたかもしれないところを、引き留めてもらっている。みんなの普段の姿勢を見るから頑張ろうと思えるのが大きい」

 ――リハビリ中に心が折れかけたことは?
 角田「最初の骨折の時はよくあるケガといっちゃよくあるケガ。もともと痛めていたところで、いずれということはわかっていたのでそこまで悲観しなかった」
 宮市「今年めっちゃあったもんな。代表選ばれて足首で。凄い1年だったよね」
 角田「アゴを骨折した時は、キッチンの方が流動食とかおかゆにしてくれた。でもやっぱりずっと食べていくと受け付けなくなる。一時期食事するのが嫌になった。ずっとテーブルに座って何もできない時間があった。でもそれもなんとか頑張って試合のためだけに食べていた。心が折れそうになったというか苦しかったのはそれくらい」

 ――味を変えてもだめだった?
 角田「味はおいしいんですよ。味はおいしいけど、何かが違うんですよ。形とか触感とか。なかなか分かってくれる人はいないと思う」
 宮市「嫌だよね。鶏肉とかミキサーにかけてさ、ドバドバになったやつを食べてたじゃん。食べられないよね」
 角田「ご飯を食べるのってマジで幸せなんだって。何もできなかったですからね。外に出ても、どこもご飯食べにいけなくて家にいるしかなかった」

 ――宮市選手は復帰に際してサポーターの声に助けられたと言っていたが、どういう声に支えられた?
 宮市「待ってるぞ、という言葉は凄く響きました。(11月12日の)C大阪戦ではケガをした選手の旗をサポーターの方がつくって振ってくれていましたけど、いい光景だなと思った」

 ――試合前にピッチに入ってきた時に気づいた?
 「ツノとウオーミングアップで2人でやるエクササイズの時に見たことがない旗が5つ(永戸、畠中、小池龍、小池裕、加藤聖)あった。ファンの想いを凄く感じましたね」
 角田「あの大きさで作るのに凄い時間もかかると思うけど選手が見えるようにちゃんと掲げてくれているのは選手からしたら凄い力になるし、うれしい。いざ試合に出る自分たちが見てもその選手たちの分までという気持ちにさせてくれた。粋な計らい。そこも含めてチームの力なのかなと思う」

続きを表示

「サッカーコラム」特集記事

「日本代表(侍ブルー)」特集記事

2023年12月30日のニュース