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浦和GK西川が本場アルゼンチンで受けた衝撃 ピッチ外でもプロフェッショナルの姿勢を貫く

[ 2022年3月17日 17:00 ]

浦和のGK西川周作
Photo By スポニチ

 <Jリーガーのこだわり:浦和レッズ GK西川周作>

 西川周作(35)には忘れられない光景がある。それは05年に大分の下部組織からトップチームに昇格したプロ1年目のオフシーズンに、アルゼンチンで目にした本物のプロフェッショナルの姿だった。

 契約していたスパイクのメーカーの協力もあり、短期留学のような形で異国に出発した。現地でのアテンドは横浜フリューゲルスでもプレーしたフェルナンド・モネール氏。現地で様々な経験をする中、名門ボカ・ジュニアーズの試合にも連れて行ってもらった。一流の選手たちのプレーぶりは印象に残っている。だが、人々を熱狂させるゲームよりも鮮明に記憶に強く刻まれた出来事があった。

 「ボカ・ジュニアーズが試合の前日に泊まってたホテルに、試合当日に行って選手たちを出待ちしたんです。そしたら、ボカのファンがもうブワーッている中で、アボンダンシエリ選手がみんなにハイタッチしてがバスに乗ったんです」

 ロベルト・アボンダンシエリ。ボカ・ジュニアーズ当時の正GKで、アルゼンチン代表でもあった(スペイン1部ヘタフェに移籍した初年度の06―07年シーズンにはリーグ最少失点に大きく貢献し、06年W杯ドイツ大会では全5試合に出場している)。そんな名選手が、ファンサービスをしてから大事な試合に向かった。西川は雷に打たれたような衝撃を受けた。

 「『うわ! この人はなんなんだ!』って思って……。試合の前なのにファン・サポーターにすごく親切で、心を打たれたんですよね。こんな選手になりたいなと」

 それまでもファン・サポーターを含めて、支えてくれている人に感謝を忘れたことはなかった。しかし、それ以降は「これからの自分のプロ人生は応援してくれている人をもっと大事にしないとダメだな」とファンサービスに今まで以上に“こだわり”を持つようになった。

 周囲を大切に思いながら歩んできたプロ人生も18年目に突入した。新型コロナウイルスが猛威を振るう前、練習場では集まったファン・サポーターに柔和な笑顔で対応する姿が日常だった。現在はコロナ禍で、気軽に後押しをしてくれる人たちと接することはできない。しかし、西川の姿勢は不変だ。直接ふれ合えないなら、「できるだけ発信しようと思っている」とSNSなどを活用している。

 ピッチ内外でプロフェッショナルを貫くこと。それが歴代6位のJ1通算528試合出場、歴代2位タイのJ1通算163無失点試合(ともに3月17日時点)を達成した男の美学だ。

 余談だが、そのアルゼンチンから帰国した西川はアボンダンシエリのプレー映像もよく視聴するようになったという。(古田土 恵介)

 ◇西川 周作(にしかわ・しゅうさく)1986年(昭61)6月18日生まれ。大分県宇佐市出身の35歳。大分の下部組織から05年にトップチームに昇格し、同年7月の横浜戦でJ1デビュー。10年に広島に移籍し、12、13年のJ1連覇に大きく貢献した。14年からは浦和の守護神として衰え知らずのプレーを披露している。J1通算528試合出場、国際Aマッチ通算31試合出場。1メートル83、81キロ。利き足は左。

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