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中国リーグ 爆買い世界一の背景 国策で「サッカー改革」

[ 2016年2月9日 12:00 ]

元U―20ブラジル代表MFテイシェイラはアジア最高額の移籍金で江蘇蘇寧に加入した(AP) 

 中国の“爆買い”が世界に衝撃を与えた。江蘇蘇寧は5日にシャフタル・ドネツク(ウクライナ)から元U―20ブラジル代表のMFアレックス・テイシェイラ(26)の加入を発表。移籍金は5000万ユーロ(約65億5000万円)でアジア最高額を記録した。欧州から大物選手を次々と獲得し、中国スーパーリーグ(1部)は今冬の移籍金の総額でイングランドのプレミアリーグを上回って“世界一”となるなど、チャイナマネーが猛威を振るっている。

 中国が“世界一の金満リーグ”に成り上がった。江蘇蘇寧が欧州CLでも活躍してきたブラジル人MFテイシェイラをアジア歴代最高の移籍金で獲得。オファーをしていたとされるリバプールとの争奪戦を制することなど、これまであり得なかったことだ。クラブレベルだけではない。5日付英BBC(電子版)によると、今冬の移籍金総額で中国1部は2億5890万ユーロ(約339億円)を支払い、世界一リッチといわれてきたプレミアリーグの2億2700万ユーロ(約297億円)を上回った。

 アーセナルのベンゲル監督が「欧州リーグ全体を中国に持って行くほどの経済力があるようだ」と驚くほどの爆買いだ。今季ACLに出場する江蘇蘇寧はテイシェイラに加えて、チェルシーからブラジル代表MFラミレスを移籍金2800万ユーロ(約36億6800万円)で獲得。昨季アジアCL王者の広州恒大は、Aマドリードからコロンビア代表MFマルティネスを4200万ユーロ(約55億円)で補強した。2部から昇格する河北華夏でさえも、ローマからコートジボワール代表FWジェルビーニョの獲得に1800万ユーロ(約23億5800万円)もの移籍金をつぎ込んだ。

 これまで中国は主にブラジルなど南米のクラブから選手を補強することが多かったが、今年は欧州CLに出場している欧州のビッグクラブから現役代表クラスの選手を次々と獲得した。土地成り金やIT長者などのクラブオーナーが、一気に投資額を増やした背景には国策がある。中国政府は昨年3月に国を挙げてサッカーの底上げを図る方針を定めた「中国サッカー改革の総合プラン」を公表。習近平国家主席はサッカーファンとして知られ、中国サッカー強化を国策に掲げており、英インターナショナル・ビジネス・タイムズは「中国におけるサッカーへの投資は利益という観点では見返りはないが、政治的な優位をもたらす」と指摘。大型補強で国策に貢献することは政権との関係強化につながり、ひいてはビジネスで利益を生むという構図だ。

 95、96年にJ1名古屋で指揮を執ったベンゲル監督は「かつて日本も同様だったが失速した。中国に政治的に強い野望があるのなら我々にとって脅威になる」と警戒。中国の移籍市場は今月26日まで開いており、さらなる大物移籍もあり得そうだ。

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2016年2月9日のニュース