星になった戦友の分もオジュウチョウサンは走り続ける

[ 2022年3月11日 05:30 ]

 【競馬人生劇場・平松さとし】12日、阪神競馬場で阪神スプリングジャンプ(J・G2)が行われる。

 一昨年のこのレースで1番人気に推されたのがオジュウチョウサン(和田正)。当時、障害に限れば11連勝中。その中には2度の中山大障害(J・G1)の他、中山グランドジャンプ(J・G1)4連覇も含まれていた。

 この絶対王者を相手に2番人気に支持されたのがシングンマイケル(大江原)。中山大障害を含む障害3連勝中。オジュウチョウサンが戦いの場を平地に求めている間に、暫定王者の座に就いていた。騎乗していた金子光希騎手は言った。「高市先生のためにも何としても勝ちたいです」

 高市先生とは高市圭二元調教師。シングンマイケルを育てた調教師で、前年の中山大障害を制した時は彼が管理していた。しかし、阪神スプリングジャンプの約1カ月前、帰らぬ人となった。大江原師は言った。「約2年半の闘病生活の末、逝ってしまいました。私は騎手時代から彼を弟分のように可愛がっていたので、何頭か預からせてもらうことになり、その中にシングンマイケルがいました。オジュウチョウサンが強いのは重々承知しているけど、何とかマイケルを勝たせてあげたいです」

 弔い合戦の様相を呈したレースは、しかし絶対王者の強さの前に脱帽するしかなかった。4分19秒1のレコードでオジュウチョウサンが真っ先にゴールを駆け抜け、シングンマイケルは9馬身遅れての2着。「オジュウは強かったけど、2着を確保しました。高市先生が後押ししてくれた結果だと思います」。金子騎手はそう言った。

 しかし、厳しい現実が待っていたのはその後のことだった。続く中山グランドジャンプの最終障害でシングンマイケルは落馬。高市師が他界してからわずか2カ月。まるでその姿を追うように自身も星となった。この時も勝利したのはオジュウチョウサン。戦友を見送った絶対王者は今年も12日の阪神スプリングジャンプに出走する。亡き戦友のためにも勝ち続けることができるだろうか。注目したい。(フリーライター)

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2022年3月11日のニュース