【有馬記念】エフフォーリア100点 天から与えられた「剛」「賢」の二物を発揮する時

[ 2021年12月21日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

世代随一の屈強な肉体を持ち、賢くて素直な気性のエフフォーリア

 3歳勢がボディーで上位を独占した。鈴木康弘元調教師(77)がG1出走予定の馬体を診断する「達眼」。有馬記念ではファン投票1位選出のエフフォーリアに唯一満点を付けた。同じ3歳牡馬のステラヴェローチェ、タイトルホルダーが高得点で続き、グランプリ4連覇が懸かるクロノジェネシスには85点の辛口採点。達眼が捉えた有力馬の明暗とは…。

 天は二物を与えずといいますが、時には例外もある。競馬の神様はエフフォーリアに二物も三物も与えた。世代随一の屈強な肉体を持ちながら、賢くて素直な気性。有馬記念のファン投票1位選出馬にふさわしい体と心を備えています。

 一目で一流馬だと思わせる機能性に富んだ骨格。きれいに抜けた首差しと滑らかに傾斜した肩(肩甲骨)が完歩の大きいダイナミックなフットワークを生み出します。車のエンジン部にあたるトモ(後肢)と絶妙な角度でリンクした強固な飛節がトモのパワーを逃さず推進力に変えています。そんな骨格には質の高い筋肉がバランス良く付いている。1歳上の3冠馬コントレイルは長距離戦も克服できる柔らかい筋肉の持ち主でしたが、こちらの筋肉は鋼のように強じんです。

 柔と剛。「柔」のコントレイルほど距離に融通が利かない半面、瞬間的な加速力は「剛」のエフフォーリアに軍配が上がる。コントレイルを一蹴した秋の天皇賞。直線半ばで後続を一気に突き放した脚が「剛」の本領です。

 体つきが「剛」なら、顔つきは「賢」。両耳を前方へキリリと立て、穏やかな目の奥に強い光を宿しています。ハミの取り方は強からず弱からず。余計な力を入れず、手を抜くこともない。スタッフが持つ引き手に遊びができるほど余裕を持って受けています。過去のG1時と全く同じ立ち姿。気持ちにブレがない。真っすぐな気性もうかがえます。

 エフフォーリアの強さの秘けつは前述した加速力と、もうひとつ。操縦性にあります。自在にコントロールが利くから巧みなレース運びができる。そんな操縦性の高さが「賢」の顔立ちや素直な立ち姿に表れています。

 有馬記念の中山2500メートル戦はコーナーを6つ回るトリッキーなコースレイアウト。各コーナーでペースが落ちるため距離に不安がある馬でもこなせる。トリッキーな舞台で求められるのは操縦性。エフフォーリアにとっては本領発揮の舞台です。

 秋の天皇賞同様、毛ヅヤは抜群。ジャパンCをパスしたゆとりあるローテのせいか、秋のいい状態をそのまま保っています。腹周りは天皇賞時よりも引き締まっている。臨戦態勢は万全。天から与えられた「剛」「賢」の二物を発揮する時です。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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