静内農高の夢乗せて 「ナリタトップスターの2020」が572万円で落札

[ 2021年8月27日 05:30 ]

斎藤誠師(左)、ミルファーム清水社長(右)とともに写真に納まる静内農高の生徒とマクフィ産駒の牡馬ナリタトップスターの2020
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 23日に開幕した競走馬セリ「北海道サマーセール」(新ひだか町、北海道市場)で北海道静内農業高校が生産した「ナリタトップスターの2020」(牡、父マクフィ)が572万円(税込み)で落札された。昨年2750万円(同)で落札された同高生産馬(テイエムケントオー=牡2、五十嵐)が好走しており、今年も注目の一頭となった。高校生の夢とオーナーの思いを乗せて、来年のデビューに期待が膨らむ。

 上場番号901番「ナリタトップスターの2020」が登場すると、会場のムードが一変。セリ4日目“目玉”の一頭は静内農高の生産馬だ。200万円からスタートすると、次々と手が挙がり、値が上昇。520万円(税込み572万円)でハンマーが下ろされると、会場からは拍手が湧き起こった。同校史上2番目の高値で落札したのは、ミルファーム。

 日本で唯一サラブレッドを生産する静内農高。授業の一環で生産学科・馬コースの生徒が毎年1頭の競走馬を生産、育成。昨年の同セールで生産馬「健叶」が同校史上最高値の2500万円で落札された。落札馬はテイエムケントオーとなり、新馬戦5着、未勝利戦で2着と好走中。今年の落札馬は昨年4月19日に誕生し、父はマクフィ、母ナリタトップスターの父はディープインパクトという良血。母の名前、母父ディープの飛ぶイメージから「星翔(ライト)」と名付けられ、3年生15人が手塩にかけて育ててきた。コロナ禍での出産で生徒は立ち会えず、やんちゃな同馬の育成には苦労もあったが、セリを終えた生徒は安どの表情で喜びを分かち合い、担当の小林忍教諭(32)は「ホッとしました。元気よく歩けるのがセールスポイント。先生が買うことを熱望してくれ、オーナーさんにも軽やかな馬体だと言ってもらいました」とうれしそうに語った。

 落札したのは、新潟千直の多頭出しでおなじみのミルファームだ。清水敏代表(56)は「旬なマクフィに、ディープ。可能性があるんじゃないかと。まずは得意の千直で、勝ち負けにならないかな?まずはそこが第一関門。今年は(ミルファーム祭りで)エシェロンが勝ったので連覇を目指します」と笑顔。だが、落札したのは血統面だけが理由ではない。「地元の人々がいないと牧場は成り立たない。毎年のように静内農の馬を誰かが買っているので、うちもそろそろお手伝いしたいと。生徒さんは純粋な気持ちで一生懸命やっているし、走ったら地元の方も喜んでくれる」。地元への恩返し、静内農高への応援も込めた落札だった。

 美浦・斎藤誠厩舎への所属が決まり順調なら来年デビュー予定。斎藤誠師は「愛情がかかっている馬なので、うまく成長させていきたい」と気合十分。今年デビューした「健叶」も初勝利まであと一歩。来年の「星翔」のデビューも待ち遠しい。高校生の夢はまだまだ続いていく。 

 《モーリスなど活躍馬多数》サマーセールはHBA日高軽種馬農業協同組合が主催、上場頭数1000頭を超える国内最大規模のサラブレッド1歳市場。今年は23~27日まで5日間、北海道新ひだか町静内の同北海道市場で開催される。香港カップなどG16勝を挙げたモーリス(12年取引馬=落札額157万5000円、13年北海道トレーニングセールで再び落札)、NHKマイルC優勝馬マイネルホウオウ(11年、同651万円)、スプリンターズS優勝馬カルストンライトオ(99年、同1890万円)、朝日杯FS優勝馬マイネルレコルト(03年、同735万円)など同セール出身の活躍馬は多い。

 《生徒3人来場「売れてホッとした」》「星翔」を育ててきた静内農高の3年生は15人。例年なら担当した全員でセリ会場を訪れるが、コロナ禍で代表の3人だけが来場し、12人は同高で見守った。セリ場で同馬を引いた佐藤香月さん(17)は「初めての経験でしたが楽しめました。売れてホッとしました」と安どの表情。藤原結さん(18)は「丈夫な体をつくって、みんなに応援してもらえるような馬になってほしい」と語り、小笠原大翔さん(17)は「健叶が走ってくれたので、星翔も負けないように頑張ってほしい」と目を輝かせた。

 ▽静内農高 北海道新ひだか町静内田原にある農業高校。78年開校。日本の道百選に選ばれ、桜の名所として名高い「しずない二十間道路」に隣接し、恵まれた自然環境のもとで農業教育を行っている。現在は129人の生徒が在籍。食品科学科と生産科学科の2学科があり、生産科学科の馬コースでは国内公立高校では唯一、軽種馬の生産育成を行っている。

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2021年8月27日のニュース