パドトロワの復活見届けターフを去ったアンカツ

[ 2021年8月27日 05:30 ]

 【競馬人生劇場・平松さとし】安藤勝己元騎手が引退を発表したのは2013年。前年の11月の騎乗を最後にしばらく乗っていない期間があった後、唐突にムチを置くとリリースされた。結果的にラストレースとなったのは京阪杯(G3)。この時点で引退発表はなかったため、特に盛り上がることはなかったこのレースで、騎乗したのはパドトロワ(栗東・鮫島一歩厩舎)だった。

 この馬と安藤勝騎手は11年の暮れに香港へ遠征。香港スプリント(G1)に挑んだ。現地で「坂路がないのでもっと負荷をかけたい」と語ったのは鮫島師。これに応えるように追い切りで併せ馬の相手として手を挙げたのが国枝栄師。香港マイル(G1)に出走する3冠牝馬アパパネを現地に送り込んでいた。

 「うちの(アパパネ)は飼い葉食いが良過ぎるので少し絞りたい。だから併せるのは歓迎です」

 国枝師はそう言った。更にカレンチャンも含めた3頭併せで追われたパドトロワだが、手応えは劣勢。それでも安藤勝騎手が「モノ見をしただけ」と言えば、鮫島師も「いい負荷をかけられました」と語った。

 しかしレースでは先行するも最後に失速。14頭立てのシンガリ14着に大敗してしまった。

 「他馬を怖がるので、最内枠を引いた時点で行くしかありませんでした。それにしてもこんなに負ける馬ではないんですけどね…」

 小首をかしげてそう語ったのは安藤勝騎手。その後、大きく負けた理由が骨折であることが判明した。

 帰国後、骨折が完治するのを待ってターフに戻ったパドトロワは、12年のアイビスサマーダッシュ(G3)を勝利して復活ののろしを上げると、続くキーンランドC(G3)も制覇。重賞連勝で完全復活を示し「これが本来のこの馬の姿です」と安藤勝騎手も笑顔を見せた。そしてこの2走後、この馬とのコンビを最後に同騎手はターフを去るのだった。

 さて、そんなキーンランドCが今週末に迫った。果たして今年はどんなドラマが待っているのか。日曜日の札幌競馬場に注目したい。 (フリーライター)

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2021年8月27日のニュース