【秋華賞】“若き職人”開業5年目杉山晴師「誰かの責任にしない」

[ 2020年10月16日 05:30 ]

杉山晴師とデアリングタクト
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 誰も見たことのない景色へ。厩舎開業5年目の若手トレーナー杉山晴師が、JRA史上初となる無敗牝馬3冠に挑戦する。開業1年目から3勝→18勝→19勝→30勝と年々成績は右肩上がり。そのスピードは今年に入って一気に加速。現時点で昨年を上回る34勝だ。「厩舎側は動ける状態をしっかりつくり、ジョッキーにバトンタッチするだけ」と杉山晴師。ブレない信念がデアリングタクトをここまで強くしたのか。

 「春はデアリングタクトの強さに、ただただ驚きました」と振り返る。デビューから管理する馬で初めて牝馬クラシックに送り出した桜花賞は、重馬場で明らかに前有利の馬場状態。前に行った2頭が粘る展開を中団後ろから難なく差し切った。

 「4角で前とかなり離れていたので、届くかなと心配していましたが、あの馬場の中、最後まで走り切った姿には感動しましたね」

 この勝利で勢力図は1強へ。オークスは断然1番人気。後方待機から直線はレース史上最速となる上がり3F33秒1で突き抜けた。「いろんな課題を乗り越えてくれました。本当に頭が下がります」。63年ぶりに無敗の牝馬2冠馬が誕生した。

 「開業5年目でこういう素晴らしい馬に巡り合えたこと。生産の方、オーナーさん、皆さんに感謝してもし切れないぐらいです」

 厩舎によってコンセプトはさまざまだが、杉山晴師は開業当初から「誰かの責任にしないこと」を常に心掛けて仕事をしてきた。ミスは全て厩舎サイドの責任。真面目な見た目通り、四六時中、仕事と向き合う。昔ながらの“職人気質”。

 「なぜ駄目だったのか。こちらでしっかり原因を究明して、次につなげる。その積み重ねが引き出しを多くさせる。これはデアリングタクトも同じ。元々の能力が高いので全てをクリアしてくれていますが、特別に何かをしているわけではない。僕らはレースまでの過程をキッチリやることが仕事です」

 9月上旬に入厩後は思い描いていた調整を完璧に遂行。史上初の偉業へ、下準備は整った。勢いある若手トレーナーがJRAの歴史に新たな一ページを刻む。

 ◆杉山 晴紀(すぎやま・はるき)1981年(昭56)12月24日生まれ、神奈川県出身の38歳。04年JRA競馬学校・厩務員課程に入学し、同年7月武宏平厩舎に所属。09年菊花賞馬スリーロールスの調教担当を務めた。同厩舎の解散により、14年3月から高橋康厩舎へ。5回目の挑戦で調教師試験に合格し、16年10月に厩舎開業。18年5月の目黒記念(ウインテンダネス)でJRA重賞初制覇。同年11月JBCクラシック(ケイティブレイブ)でJRA・G1初制覇。JRA通算1181戦104勝。

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