豊でも乗り越えられなかった“最も偉大な2分間”

[ 2020年9月4日 05:30 ]

16年ケンタッキーダービーに出走したラニと武豊(AP)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】新型コロナウイルスと戦っているのは世界中、どこの競馬場も同じ。米国では本来、とっくに終わっているはずのケンタッキーダービー(G1、チャーチルダウンズ競馬場)がようやく今週末に行われる。

 4年前の16年、このケンタッキーダービーに挑んだのがラニ(栗東・松永幹夫厩舎)だ。

 3月のドバイでUAEダービーを勝利。ケンタッキーダービーの出走権を取得すると、そのまま渡米。“米国で最も偉大な2分間”と呼ばれるこのレースに挑んだ。

 騎乗したのは日本が誇る武豊騎手。その21年前にもこのレースに騎乗している彼は「当時よりスケールアップしている」と目をむいて語った。それもそのはず当日はレース史上2番目という16万7227人の観衆が駆けつけ、馬場入り時には「マイオールドケンタッキーホーム」を大合唱したのだ。

 しかし、武豊騎手はその合唱を背中で聞いた。他馬に先がけてただ1頭、早めに馬場に入りスタート地点へ向かっていたのだ。天才騎手は当時、言っていた。

 「ラニは気性の難しい馬だから陣営がさまざまな手を打ってくれました」

 この馬場入れもそんな手段の一つ。他にもパドックへの入場を最後にする、パドックのみパシュファイヤーを装着する、リードポニーは着けないなどのリクエストを通してもらっていた。

 しかし、結果はNHLのスター選手であるナイキストの名をもらった1番人気馬が快勝したのとは対照的に9着に敗れてしまった。

 「他馬に反応して馬っ気を出すなど難しい面がある馬なので、狭いチャーチルダウンズ競馬場で仕上げるのは難しかったです」

 松永師はそう言って唇をかんだが、武豊騎手は意外とサバサバ
とした表情で次のように語った。

 「考えていた競馬はできました。敗因は“これがケンタッキーダービー”ということでしょう」

 果たして今年はどんな2分間のドラマが待っているだろう?無観客でも好勝負が繰り広げられることを期待したい。 (フリーライター)

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2020年9月4日のニュース