千島北斗牧場 日本で最北端の競走馬生産牧場 種付けも片道5時間、流氷の音を聞き育つサラブレッド

[ 2019年8月20日 16:43 ]

2頭の繁殖牝馬、イーグルアモン(右)とミスバイアモン
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 北はオホーツク海、東は知床で知られる斜里町、西は網走市。人口5000人にも満たない北海道北東部の小清水町について、あえて競馬に関係するワードを探せば“小島太の出身地”ということだろうか。そんな静かな町に、おそらくは日本で最東端かつ最北端の競走馬生産牧場がある。1950年代に創業した千島北斗牧場。海沿いを走る国道244号線から、草を食む馬の姿が見えた。2代目場長の千島勇一さん(62)の言葉から“馬産の僻地”であることがありありと伝わってくる。

 「何が大変かって獣医かな。このあたりには牛を診てる獣医しかいないから、何かあった時は困るよね。種付けも片道5時間ぐらいはかかる。牧場に来る人なんていないさ。調教師も来たことないよ」

 北海道は広い。最も近い種馬場でも牧場から300キロほど離れている。東京から名古屋に匹敵する距離だ。環境も厳しい。冬はマイナス30度近くまで冷え込む日がある。牧場からオホーツク海までは1キロほど。「流氷が来たらギシギシって音が聞こえるよ」。世界広しといえども、流氷の音を聞きながら育ったサラブレッドは他にいないだろう。

 近年の生産馬で最も活躍したタガノタイムピース(05年生まれ)はJRAで3勝を挙げた。カトラス(10年生まれ)はJRA在籍時に42戦3勝の成績を残した後、地方・園田へ移籍。9歳を迎えた今もバリバリと走っている。

 「タガノタイムピースは1000万も勝ったし、よく頑張ってくれました。カトラスは牧場にいた頃、細かったんですよ。それがあんなに走るとは思いませんでしたね。生産馬のレースはできる限り、グリーンチャンネルでチェックしていますよ」

 現在は2頭の繁殖牝馬をけい養している。イーグルカフェ産駒のイーグルアモンはJRAで2勝を挙げたスプリンター。今年から繁殖に上がり、お腹の中にはメイショウボーラーの子どもが宿っている。千島勇一さんは「スピードのある子ができるんじゃないかなと思ってるんだけどね」と配合の狙いを口にした。

 牧場の未来について聞くと、「これといった目標はないんです。とにかく生産馬が無事に走ってくれたら…」と柔和な笑み。そんな控え目な期待をいい意味で裏切ってくれる、オホーツク育ちの優駿の誕生を心待ちにしたい。

 <千島家と深い縁>千島家は馬と密接につながっている。勇一さんの父・一巳さんは道営競馬の元調教師。兄の武司さん(ともに故人)も同じく道営競馬で当時としては新記録となるリーディング5回獲得の名ジョッキーだったが、77年に馬に蹴られて亡くなった。藤沢和厩舎の千島英之助手や、元JRA職員で東京の立石熊野神社で宮司を務める千島俊司さんは甥(おい)にあたる。2人のおいについて、「子どもの頃はよく遊びに来てたんですよ」と勇一さん。牧場は長男の崇臣(ひろおみ)さん(38)が3代目として継ぐ予定。「千島」の看板は脈々と受け継がれていく。

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